研究実績の概要 |
【研究の目的】近年、DOHaD理論により早産・低出生体重児の腎機能についての研究が進んでおり、我々の研究グループでも、子宮内発育遅延モデルラットにおいて腎機能障害に先駆けて尿中アンギオテンシノーゲンが上昇すること(Murano Y, at al.Pediatr Res. 2015)を報告してきた。しかし現時点では「糸球体障害」にこれらの研究の主眼が置かれている。腎発生において、糸球体だけでなく尿細管・間質にも何らかの影響を受けていることは予測される事であり、その詳細な検討を行うことや、成長後に及ぼす影響をAQP2を用い解明することが本研究の目的である。 【研究の実績】子宮内発育遅延(IUGR)モデルラットを用い、尿細管機能を評価するため検討を行った。出生体重はIGUR群:5.64±1.29g 対照群10.32±1.13g(P<0.01)と有意差を認めた。尿浸透圧(mOsm/kg 8週)IUGR群:1257.6±273.9 対照群:1148.6±367.0(P=0.4)、血清cre(mg/dl 8週) IUGR群:0.253 対照群:0.257 (P=0.45)有意差を認めなかった。免疫染色では対照群に比べIUGR群のAQP2の発現が低下していた。しかしAQP2の発現をWestern Blottingにおいて確認をしたところ、IUGR群:0.94±0.37 対照群1±0.36(P=0.36)と、これらの発現に有意差が認められなかった。これらの解離に関して現在調査検討中である。これまでの結果よりAQP2の発現に障害が起こっている可能性が示唆され、これらの成果は今後の早産・低出生体重児の尿細管機能研究において重要な知見と考えられる。より有意な成果を得られるために、遠隔期(32週等)へ実験期間を延長することも検討している。これらの成果が揃い次第、論文化する計画である。
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