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2016 年度 実施状況報告書

体肺側副血行路再現による発生機序の解明と予防的治療選択法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 16K19671
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

伊藤 怜司  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20595194)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード血管新生 / 低酸素応答 / 動物実験 / 体肺側副血行路 / 先天性心疾患 / VEGF
研究実績の概要

肺血流減少型のチアノーゼ型心疾患では体肺側副血行路を合併し、容量負荷に伴う心不全や正常肺血管床の発育抑制、肺動脈リモデリングから晩期合併症を生じる素地となることが知られている。その発生機序は未だ明らかではなく、その最大要因は体肺側副血行路の良い実験モデルが確立していなかったことが挙げられる。研究代表者は外科的に作成した左肺動脈結紮肺血流減少モデルラットを低酸素環境下で飼育することにより、体肺側副血行路の作成に初めて成功した。今回、そのモデルラットを用いて体肺側副血行路の発生機序を解明し、心不全治療で用いられる血管拡張薬が血管新生に与える影響を評価することを目的とした。また、体肺側副血行路に対し侵襲的なコイル治療や外科的結紮術を回避すること、心不全治療として使用される血管拡張薬が体肺側副血行路の増生を促すのであれば服用を避けることが可能となり、医療費の削減に繋がる可能性がある。
現在、術後3週での評価を終え、低酸素および大気下飼育での環境の差異を評価した。低酸素環境下で飼育することにより体肺側副血行路はより増生していることを確認したが、分子生物学的検討では血管新生促進因子の増幅は認められず、むしろ血管新生抑制因子の増幅が認められた。以上の結果から、術後3週での評価では血管新生は収束していると考えられ、血管新生の機序解明には評価時期の変更が必要である。
以上の結果を踏まえ術後評価時期を変更し、引き続き評価を継続している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

血管新生における研究は、虚血性心疾患や腫瘍・炎症性腸疾患を中心に行われ、低酸素環境が主たるトリガーとなりHIF(hypoxia inducible factor)等の転写因子が発現し、VEGFを中心とした血管新生促進因子が作用すること、NOを介した血管拡張作用が亢進することが報告された。更に血管新生抑制因子としてVasohibinやUrocortin-2等が同定され、これら相反する因子が相互作用し秩序的な血管網の形成に関わる事が明らかになった。
本研究では低酸素環境下に3週間飼育後、摘出肺と造影CT画像にて確認し、摘出肺を用いて血管新生因子や抑制因子の発現を免疫染色やGene chipやRT-PCRを用いて同定した。また大気環境における飼育による同因子の変化を評価し、酸素が与える影響も評価した。体肺側副血行路の定量化のため、経胸壁心エコーや造影CTにより短絡量を測定し、各モデル間の比較を行い環境や条件による変化を評価した。
以上の方法を用いて術後3週での評価を行い、低酸素および大気下飼育での環境の差異を評価した。低酸素環境下で飼育することにより体肺側副血行路はより増生していることを確認したが、分子生物学的検討では血管新生促進因子の増幅は認められず、むしろ血管新生抑制因子の増幅が認められた。以上の結果から、術後3週での評価では血管新生は収束していると考えられ、血管新生の機序解明には評価時期の変更が必要と判断した。
以上の理由から、現在モデル作成後の評価時期を変更し解析を継続している。

今後の研究の推進方策

本研究の術式により体肺側副血行路の再現は可能である。
ただし、血管新生を評価する上で術後3週の解析は血管新生の収束を確認することに限られた。よって、現在は術後3日、1週、2週、4週での追加解析を行う方針とし、引き続き実験を継続している。また、体肺側副血行路の定量化を行う上で経胸壁心臓超音波検査のみでは信頼性に欠けるため、Transonics Systems社製のUltrasonic flow probeを用いて計測することとし、経胸壁超音波検査との相関性評価を開始している。
上記時期での評価を終えた後には、血管拡張薬による体肺側副血行路への評価を行うため、定量化方法の確立が重要と考えている。

次年度使用額が生じた理由

術後3週における評価により、血管新生を評価する上で評価時期を変更する必要が生じた。
よって、免疫染色や分子生物学的手法に用いる抗体等の購入は待機しており、現時点での使用金額の主体は動物購入および飼育料、窒素ガス購入費である。
次年度より各種抗体の購入を行う予定であり、平成28年度予算の残額から使用していく予定である。

次年度使用額の使用計画

平成29年度より採取したサンプルを用いて免疫染色およびRT-PCR、Western-blot法による解析を開始する予定である。
解析結果を踏まえ対象とする血管拡張薬の投薬を開始し、再度血管新生への影響を評価する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] APCA発現モデルにおける分子生物学的手法を用いた新生血管発生機序の解明2016

    • 著者名/発表者名
      伊藤 怜司
    • 学会等名
      第133回成医会総会
    • 発表場所
      東京慈恵会医科大学大学1号館
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-07
  • [学会発表] APCA発現モデルにおける分子生物学的手法を用いた新生血管発生機序の解明2016

    • 著者名/発表者名
      伊藤 怜司
    • 学会等名
      第52回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      東京ドームホテル
    • 年月日
      2016-07-06 – 2016-07-08

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公開日: 2018-01-16  

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