研究実績の概要 |
平成29年度までに作成した動物モデルを用いて、体肺側副血行路短絡量の時間的推移および血管新生因子の発現量の評価を行なった。 方法は低酸素飼育と大気下飼育群において術後各3日、1~4週後で以下の比較を行った。各評価時期において各10~20匹のサンプルから体肺側副血行路短絡量、摘出肺を用いた血管新生因子の発現量の評価を行った。体肺側副血行路短絡量は、経胸壁心臓超音波検査とTransonic systems社の超音波血流計により算出し、結果の客観的評価も行なった。 結果は、経胸壁心臓超音波検査と超音波血流計の間で良好な相関(N=22, R=0.76, p<0.001)が得られ、短絡量はone way ANOVAを用いた2群間の比較により低酸素群は術後2週で有意(p<0.05)に増加するが、術後3週以降では差が消失し、以降は肺体血流比1.5程度で一定化した。また、各評価時期の摘出肺を用いた血管新生因子のquantification PCRでは、術後3日に両群共にHIF-1αが増幅(>10 fold change)し、以降VEGF、Angiopoietin1および2、続いて各受容体遺伝子が増幅した。しかし、大気下飼育群は術後2週、低酸素飼育群は術後3週には基礎値に復した。 以上の結果より、体肺側副血行路はHIF-1αの発現に伴い各種血管新生因子が増幅し、短絡量を増加させた。しかしながら肺体血流比1.5程度を境に血管新生因子は基礎値に復し、血管新生反応は消失したと考えられた。特にHIF-1αは虚血に伴う血管新生反応の中心を担う転写因子であり、低酸素刺激によって分解反応が低下し安定した発現が維持される。よって低酸素飼育群では、大気下飼育群と比較し早期に短絡量の増加が得られたと考えた。現在、更に血管新生因子のタンパク発現量の時間的推移をWestern blot法を用いて測定中である。
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