研究課題/領域番号 |
16K19684
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
西倉 紀子 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (00649246)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 鉄欠乏性貧血 / ラット / 乳児栄養 / 解剖学 |
研究実績の概要 |
鉄欠乏の影響を明らかにするために妊娠初期(受精後5日)から生後6日まで鉄を1/10量に制限した胎児鉄欠乏群7匹および生後21から39日まで同様に鉄を1/10量と制限した乳児鉄欠乏群4匹、食事制限のないコントロール群5匹の3群の実験動物(ラット)において行動異常と脳内生理異常との関連を解析した。行動解析ではオープンフィールド試験(OP)・高架式十字迷路試験(PM)を8週齢と12週齢に行った。8週齢ではOP/PMともに有意な差は認めなかったが、12週齢ではOP・PMとも有意な差を認めた。OPでは、交互作用において有意な差を認め、コントロール群に比べ、胎生期鉄欠乏群においては総距離の減少および辺縁部滞在時間の増加があり、一方乳児期早期鉄欠乏群では総距離の増加および中心部滞在時間の増加を認めた。乳児鉄欠乏は成獣となってからも多動が残り、乳児鉄欠乏群では不安が高い状態であると考えられた。 日齢94に脳内モノアミン定量を前頭前皮質、側座核、尾状被殻、中脳背側、中脳腹側、橋において行った。胎児鉄欠群において、前頭皮質で5HT、側座核でDAと3MT上昇を認め、乳児鉄欠群は側座核で5HTと5-HIAAの上昇を認めた。 異なる時期での鉄欠乏は産仔の神経心理学的な発達特性とその脳内生理(脳内モノアミン系の動態)に違った変化をもたらしていることが明らかとなった。同様の鉄欠乏の実験計画において、どの程度貧血が存在しているかを明らかにするために血算測定を行い確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の行動解析およびモノアミン定量の結果を踏まえて、胎児鉄欠乏の影響は行動解析およびモノアミン定量の結果とも既存のものに合致するものであった。臨床的によく経験する2歳までの乳児鉄欠乏の影響を明らかにするためには乳児鉄欠乏群にしぼって研究を継続する方向が見い出せた。
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今後の研究の推進方策 |
乳児鉄欠群とコントロール群の二群に絞り、ラットの個体数を増やして研究を進めたいと考えている。行動実験の結果において有意な差が得られれば、凍結保存している片側脳を用い遺伝子発現の解析(RNAマイクロアレイにより行動異常に関連した遺伝子発現変化を解析する)、やエピジェネティクスの解析(成獣のミクログリア、神経幹細胞において、ヒストン修飾やDNAメチル化などの変化を解析し鉄欠乏によるエピジェネティクスの変化を検討する)を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物個体数を増加させる必要があったが、行動実験の結果が季節の影響を受けるため、前年度と同じ季節に実験を開始する必要があり、今年度に持ち越すこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
5月中旬より実験動物数を増加させ実験をすすめる予定である。
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