研究課題
脳性麻痺は、受精から生後4週までの間に何らかの原因で受けた脳損傷によって引き起こされる難治性疾患である。現在、根本的治療法はなく、有効な新規治療法の確立が待ち望まれている。本学では『小児脳性麻痺など脳障害に対する自家臍帯血細胞輸血』の臨床研究が行われているが、治療メカニズムは明らかにされていない。本研究は、我々が独自に開発した脳性麻痺を再現する新生仔脳虚血再灌流モデルマウスを用いて、臍帯血投与と運動刺激(リハビリテーション)の併用療法による損傷脳修復機構の解明を目的として行った。まず、新生仔脳虚血再灌流障害モデルマウスを作製し、脳切片にて神経幹細胞の免疫染色を行った。脳傷害側の脳室下帯では神経幹細胞数が増加し、傷害部位に向かって活発に遊走していた。このモデルマウスに対してトレッドミルを用いたリハビリテーション及び臍帯血投与を実施し、行動学的、組織学的評価を行った。ロタロッドテストによる行動学的評価において、臍帯血投与及び運動刺激の併用療法群は、コントロール群や単独治療激群に比べて運動機能の改善傾向を示した。さらに運動刺激群と併用療法群の脳傷害側では、海馬における神経新生が活性化していた。次に、モデルマウスの脳内微小環境を明らかにするために、脳組織ライセートを用いてサイトカイン定量抗体アレイを行った。脳の正常側に比べ傷害側で高発現しているサイトカインやケモカインを同定し、その中でもCCL11が特定の受容体を介して神経幹細胞の増殖と遊走を活性化することを明らかにした。さらにモデルマウスにヒト臍帯血細胞投与を行うと、脳組織内のサイトカイン・ケモカイン発現が大きく変動した。これらの発現プロファイルを解明することと組織修復や機能改善に関わる役割や機能を明らかにすることによって、脳性麻痺に対する臍帯血治療がより効果的な治療法になりうると考えられる。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Brain and Development
巻: 44 ページ: 681-689
10.1016/j.braindev.2022.08.004.