研究課題/領域番号 |
16K19687
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
馬場 伸育 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (30711296)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ケモカイン / マウス脳性麻痺モデル / 臍帯血細胞移植 |
研究実績の概要 |
マウス脳性麻痺モデルの傷害側と正常側脳組織から調整した組織溶解抽出サンプルにおけるケモカインの発現プロファイルを抗体アレイ法により検討した結果、傷害誘導後24時間で傷害側正常側に関わらず脳組織全体として多数の分子の発現増強がみられた。この中にはCXCL12やCCL2、CCL17などが含まれていた。さらに傷害後1週、3週の時点で、正常側と比較して傷害側において発現が増強していたケモカインとしてCCL9やCXCL1、CXCL16などが認められた。半定量解析法である上記抗体アレイの結果は、ビーズを用いたフローサイトメトリー法による絶対定量解析により確証した。 さらに、マウス脳性麻痺モデルに対して、傷害後3週の時点でヒト臍帯血細胞移植を施し、移植後2週目の時点で同様にケモカインの発現変化を検討したところ、組織傷害と臍帯血細胞移植の両方の作用として複数のケモカインの発現変動傾向が認められた。抗体アレイの解析によりCCL5やCCL12、CX3CL1などの発現増強傾向が見出されたが、定量解析による解析でも有意差を得るまでには至らなかった。 発現変動を示したケモカイン分子の産生細胞を検討するため、免疫組織化学染色法によりミクログリアのマーカーであるIba-1や成熟ニューロンのマーカーであるNeuNと共染色したところ、CXCL12やCCL9はミクログリアおよび、または成熟ニューロン細胞が産生細胞であることが分かった。一方で、CX3CL1は染色パターンからそのいずれでもない別の細胞が産生細胞であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス脳性麻痺モデルの脳組溶解抽出サンプルにおけるサイトカインケモカイン発現のプロファイルを抗体アレイ法により測定した。この結果をもとに、傷害や臍帯血移植により発現が変動したケモカインに注目して定量解析を行った。当初ELISA法により測定する予定であったが、複数個の測定項目に注目して、ビーズを用いたフローサイトメトリー法によるタンパク同時多項目測定方法に変更して定量した。ケモカインの産生細胞に関する検討のため免疫組織化学染色法による解析を行い2つの細胞種のケモカイン産生能を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
マウス脳性麻痺モデルに対するヒト臍帯血細胞移植において、移植の効果として得られた結果はケモカイン発現の増強効果、傾向にとどまり、さらに、ケモカインの発現変動と治療効果を関連付ける点で課題を残した。評価ポイントを移植後2週目に限らず、マウスの運動機能など症状を観察しながら異なる評価ポイントを設定して検討を行う。 そして、組織傷害や臍帯血細胞移植により発現変動したケモカイン分子が、移植した臍帯血細胞に及ぼす作用や影響を検討するため、臍帯血細胞をケモカインで刺激して、細胞分化、活性化マーカーの発現など表現型の変化やサイトカイン産生能、細胞遊走能などの機能を調査評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究用データ解析ソフトの購入に際し、国内の販売代理店を介さず米国販売元から直接購入したことから、当初計上した予算の半額程度で購入することができた。 また、実験に使用する試薬類について、抗体アレイによる定性的な実験結果に基づき、ターゲットを絞って次の定量解析実験を計画する手順であったため、ターゲット分子を確定するために、さらに定量測定キットの精度を評価して選定するために時間を要したため、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
ターゲット分子とそれを定量的に測定する試薬をすでに決定したことから、これら実験試薬など消耗品を購入するために使用する。測定時にreplicate(重複)測定を行い、データの精度と信頼性を向上させるために次年度使用額を有効に活用する。
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