研究課題/領域番号 |
16K19690
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
近藤 友宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (40585238)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 未熟児医学 / 栄養管理 / 腎臓 / 高血圧 / メタボリックシンドローム |
研究実績の概要 |
本研究はFGRモデルマウスを用いて、これまでの研究で明らかにした幼若期に栄養介入を行った場合に認められる成熟後の血圧上昇抑制がどのような機序でおきているかを解明するとともに、栄養介入が中枢神経系に悪影響を及ぼしていないかを明らかにすることによって、低出生体重児の乳児期、小児期における適切な栄養管理法の開発を目的としている。 妊娠中に低蛋白食を給餌することによりFGRを引き起こし、生後catch up growth達成後に栄養介入を行う群(栄養管理群)、行わない群(FGR群)の2種のFGRモデルに対照群を加えた3群のマウスを作製し、研究に使用した。結果:1)生後10週齢での体重、脳重量、大脳半球面積、大脳皮質面積、脳組織のH.E染色像ならびKluver-Barrera(KB)染色像に、3群の間に有意差や目立った差は認められなかった。結果:2)1と同様に生後10週齢で行った、オープンフィールド試験での移動距離、不動時間、中央区画滞在割合、高架式十字迷路試験でのオープンアーム滞在時間、受動回避学習試験でのlatency、freezing、Y字迷路試験での自発交替率、すべてにおいて3群間で有意差は認められなかった。これらのことから本研究での栄養介入は神経学的発達に悪影響を与えないことが示唆された。結果:3)生後30週齢の腎臓を用いてトランスクリプトーム解析を行った結果、2倍以上の発現変動していた遺伝子数は、対照群-FGR群間では1982個、対照群-栄養管理群間では2818個、FGR群-栄養管理群間では1773個であった。FGR群-栄養管理群間で変動の認められた遺伝子のうち栄養管理群で発現が上昇していたものは959個、発現が減少していたものは814個であった。現在、パスウェイ解析、遺伝子セット解析を行っており、本研究での血圧上昇抑制に関与していると思われる遺伝子群を探索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では初年度に腎臓における遺伝子転写産物の網羅的解析を行った後、重要と考えられる遺伝子群について、解析ポイントを増やして発現変動を明らかにする予定であったが、成熟後の個体数が揃うのが遅れたため、現在重要と考えられる遺伝子群の探索中である。しかしながら次年度以降に行う予定であった、中枢神経系に与える影響の解析を前倒しで行っており、全体の進捗状況としてはおおむね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
30週齢でのパスウェイ解析、遺伝子セット解析の結果より、本研究で重要と考えられる遺伝子群を抽出した後、解析ポイントを増やして、それらの遺伝子群がどのような発現変動をとるかを明らかとする。また、成熟後のマウスについても行動解析や病理組織学的解析を行うことにより、中枢神経系に与える影響をより詳細に検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施予定であった、血圧変動関連遺伝子の再現性並びに複数のポイントでの発現変動解析を、次年度に実施することになった事と、次年度実施予定であった行動解析ならび中枢神経系の病理組織学的解析を一部前倒しで実施した事により、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は血圧変動関連遺伝子群の複数ポイントでの発現変動解析を行うとともに、行動解析、病理組織学的解析についても、より詳細な解析を行う。さらに本研究で得られた成果を学会発表並びに学術論文へ投稿する予定である。そのため主な研究経費として、遺伝子解析用試薬、蛋白解析用試薬などの消耗品購入費や、旅費、論文投稿費を予定している。
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