研究課題/領域番号 |
16K19690
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
近藤 友宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (40585238)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 未熟児医学 / 栄養管理 / 高血圧 / 腎臓 / メタボリックシンドローム |
研究実績の概要 |
本研究はFGRモデル動物を用いて、胎児発育不全により低体重で出生した児の高血圧発症リスクを軽減させる、乳児期、小児期の栄養管理法の開発を目的としている。昨年度までの研究により、母体低蛋白食給餌によって作製したFGRモデルに対する栄養管理が中枢神経系に悪影響を及ぼすことなく、将来的な高血圧発症を抑制することを明らかとした。そこで本年度は栄養管理がFGRモデル作出方法を変更した場合にも有用であるかを検討するための新たなFGRモデルを作出し、腎臓を主としてその特性を明らかとすることに焦点をあて解析を行った。当初、モデル動物は子宮胎盤循環遮断により作出する予定であったが、産子の成績が安定しなかったため、母体5/6腎臓摘出によりFGRを引き起こすという新たなFGRモデルを作製し解析に用いた。 1)妊娠母体に5/6腎臓摘出手術を施したところ、得られた新生子の出生時体重は対照群と比べ、有意に軽くなっており、FGRを引き起こしていることが確認できた。2)出生時腎臓の組織形態観察を行ったところ、腎臓体積は有意に減少していたものの、低蛋白食給餌によるFGRの場合に認められた、単位体積あたりの腎小体数、腎臓あたりの腎小体数および腎小体体積には有意な差は認められなかった。また24週齢まで観察を行っても同様の結果であった。3)血圧調節因子である、レニン、AGTの発現について検討した。低蛋白食給餌によるFGRで認められた、若齢期でのこれらの因子の発現差は母体5/6腎臓摘出によるFGRモデルでは観察されなかった。4)収縮期血圧を測定したところ、24週齢まで有意な差はなかった。低蛋白食給餌によるFGRでは出生直後の腎臓が未熟な状態であることが今までの研究でわかっているが、母体5/6腎臓摘出によるFGRではその傾向が認められず、そのことが将来的な高血圧発症リスクを高めていない原因と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、平成29年度は母体低蛋白食給餌によって作製したFGRモデルに栄養介入を行った場合の血圧関連因子を複数ポイントで解析する予定であったが、FGR作出方法を変更した場合とも比較するため、平成30年度に行う予定であった2種類のFGRモデル作出を前倒しで行った。母体5/6腎臓摘出によるFGRモデルだけでなく、摂餌制限によるFGRモデルの作製も現在行っており、全体の進捗状況としてはおおむね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
摂餌制限によるFGRモデルの腎臓発達、高血圧発症リスクなどの特性を明らかにするとともに、血圧上昇が認められた場合、母体低蛋白食給餌によって作製したFGRモデルに対する栄養管理と同様の栄養管理を導入し、同様に血圧上昇抑制効果が認められるかを検討する。また、三種類のFGRモデル動物を用い、血圧関連因子の複数ポイントでの解析を行い、FGRと高血圧発症リスクとの関連ならびに栄養管理を導入した場合の有用性を総合的に検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度実施予定であった解析と平成30年度実施予定であった解析を大きく変更したことや、平成29年度に投稿予定であった論文が平成30年度にずれ込んだことにより、消耗品、動物購入費、動物飼育費、論文投稿費などに差額が生じている。 (使用計画) 平成30年度は血圧変動関連遺伝子群の複数ポイント、複数モデルでの発現変動解析を行い、本研究での栄養管理の有用性並びに低出生体重とその後の高血圧発症リスクとの関連をより詳細に明らかにする予定である。さらに本研究で得られた成果を海外を含めた学会発表、ならびに学術論文へ投稿する。そのため主な研究経費として、遺伝子解析用試薬、蛋白解析用試薬などの消耗品購入費や、旅費、論文投稿費を予定している。
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