研究実績の概要 |
前年度はこれまでの研究から有用と考えられた栄養管理法がFGRモデル作出方法を変化させた場合も有用であるかを検討するために、母体5/6腎臓摘出によりFGRを引き起こすという新たなFGRモデルを作製し解析に用いた。出生時体重よりFGRを引き起こしていることは確認できたものの、成熟後の血圧上昇が認められず、栄養管理の有用性の検討に至らなかった。血圧上昇が認められない原因としてこのモデルは自然にはcatch-up-growthを達成しないことが考えられた。そこで今年度は5/6腎臓摘出母体より得られた新生子の哺育子数を調整し、catch-up-growthを引き起こした後の腎臓、血圧変化を主として解析を行い、このモデルの特性のさらなる解明を行った。 妊娠母体に5/6腎臓摘出手術を施し、得られた新生子の哺育数を3匹にした場合(ope-3群)、1)3週齢で対照群(哺育数:8匹)の体重に追いつき、比較的早期にcatch-up-growthを達成させることができた。2)収縮期血圧は4週齢で対照群、ope群(5/6腎臓摘出手術後、哺育数:8匹)と比較して有意に高くなっており、24週齢まで同様の結果が得られた。3)血液生化学的検査の結果、ope-3群は12週齢、24週齢においてCre, HDLC, T-Cho, TGが他の2群に比べ有意に増加していた。4)組織学的解析の結果、ope-3群は12週齢、24週齢いずれの週齢においても他の2群と比較して腎糸球体硬化が進行している所見が観察された。これらのことより、母体5/6腎臓摘出によるFGRの場合も生後早期にcatch-up-growth引き起こした場合、高血圧発症リスクが増加することを明らかにすることができた。これまでの研究で明らかにした高血圧発症リスク減少に有用と考えられる栄養管理法がこのモデルでも有用であるかを検討することが今後の課題である。
|