研究課題/領域番号 |
16K19692
|
研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
深谷 睦 城西大学, 薬学部, 助手 (70611812)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | フルクトース / 生活習慣病 / 脂質代謝 / エピジェネティクス / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
胎児・乳児期の胎内環境や母乳を介した栄養環境は,エピゲノム制御を引き起こし,メタボッリクメモリーとして体内に記憶され,世代を越えて児に変化を及ぼし(トランスジェネレーション),その結果,成長後の児の肥満や疾病リスクの増大を招くものと推測されている。果糖液糖ブドウ糖(高果糖コーンシロップ)などとして多くの清涼飲料水に含まれる「フルクトース」は,脂質蓄積能が高く,疾病発症リスクに及ぼす影響が大きいことが懸念される。さらに,フルクトースはその代謝過程において極めて毒性の強い終末糖化産物 (advanced glycation end products;AGEs)を産生し,糖化ストレスを生じるなどトランスジェネレーションが懸念されている食品成分の1つである。そこで,妊娠・授乳期における母親の「フルクトース」の習慣的摂取による仔への影響についてマウスを用いて検討することとした。 これまでの実験の結果,母マウスが習慣的にフルクトースを摂取していた群では,離乳時の仔マウスにおいて白色脂肪の蓄積が認められた。離乳時における変化は,妊娠期および授乳期の栄養環境に起因していると考えられることから,母乳について解析した結果,タンパク質量等に変動傾向が認められた。これらのことから,母親のフルクトース摂取による母乳を介したトランスジェネレーションが示唆された。また,15週齢仔マウスの糞便量を測定した結果,フルクトース摂取により糞便量の減少が認められたことから,フルクトースの摂取は腸内細菌叢にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。今後は,今回得られたサンプルを用いて,成長後の仔マウスにおける疾病発症リスクについて,酸化ストレス,AGEs,エピゲノム制御,腸内細菌叢の視点を踏まえて詳細に検討していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,計画に準じて,フルクトース過剰摂取母マウスとその仔マウスを作製した。まず,糖分析計を用いて市販の加糖飲料中のフルクトース含有量を測定し,この結果をもとに投与するフルクトース水の濃度を決定した。3週齢の雌性ddY マウスに市販の加糖飲料と同等濃度のフルクトース水を6週間自由摂取させた後,交配妊娠させた。一方の比較対照群には,蒸留水を摂取させた。出産後3週間を授乳期とし,仔マウスに哺乳させた。フルクトース摂取による母乳成分への影響を検討することを目的として,1週毎に母マウスより母乳を採取した。また,妊娠および授乳期の栄養環境による仔への影響を検討するため,一部の仔マウスを離乳時に解剖した。離乳後の仔マウスは,フルクトース水もしくは蒸留水摂取のそれぞれ2群に分け,16週齢時に解剖し,仔マウスより血液や肝臓等を中心に必要サンプルを採取した。現在,得られたサンプルを用い,母乳成分の解析や仔マウスにおける血液パラメーターの測定を順次進めており,これらのことから,おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,当初の計画通り,成長後の仔マウスにおける疾病発症リスクについて検討する予定である。母マウスのフルクトース摂取により,成長後の仔マウスに生活習慣病などが誘導される可能性は高いと考えられることから,血中パラメーターの測定や肝・脂肪組織の脂肪蓄積の有無を確認する。その後は,仔マウスの肝臓における糖・脂質代謝関連遺伝子の発現解析として,まず,DNA マイクロアレイ法により,網羅的に遺伝子の発現変動状態を確認し,発現変動が認められた遺伝子においては,詳細な検討のためmRNA レベルでの解析をReal time RT-PCR 法,タンパク質レベルでの解析をWesternblot 法により行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品購入等の使用額に多少の変更が生じたものの,ほぼ予定額通り使用した。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初の申請通り,遺伝子発現解析のためのDNAマイクロアレイ解析費やRNA抽出・PCRに使用する試薬,抗体等の購入に充てる予定である。
|