手足症候群は抗悪性腫瘍剤による皮膚障害の一症状で、主に手や足に生じる皮膚症状を総じて呼称されている。軽度の刺激感や発赤のみでとどまるグレード1から、高度な皮膚の角化や水疱形成、潰瘍形成などを引き起こし、日常生活に支障をきたすようなグレード3の重症度に至る症例もある。グレード3に至る場合は、治療中断の適応になる。これら手足症候群が発症する機序については、未だ明らかになっていない。我々は、手足症候群にみられる掌蹠の紅斑や角化が特に加重部位などの被刺激部に症状が強く、遺伝性掌蹠角化症であるパピヨン・ルフェーブル症候群( PLS )の臨床に類似していることに着目。PLSはジペプジルペプチダーゼI ( DPPI )としても知られる酵素カテプシンC ( CTSC )をコードするCTSC遺伝子変異によって発症する。つまり、詳細な機序は不明だが、酵素CTSCの活性低下により掌蹠の過角化が引き起こされる。本研究の目的は、PLSと類似した臨床所見を呈する手足症候群が、PLSのようにカテプシンCの発現や酵素活性と関連するかを検討することを目的とする。両者の関連性を証明できれば、将来的には手足症候群の予防や治療に貢献すると考える。 本年度は、1 ) カテプシンCの発現を上昇させるサイトカインを検出し、2 ) HaCaT ( 不死化表皮角化細胞株 ) の培養液中に手足症候群の原因薬剤と、カテプシンCの発現上昇させるサイトカインを同時投与した時のカテプシンCの発現量について検討した。
|