研究実績の概要 |
臨床的に眼皮膚白皮症(OCA)、遺伝性対側性色素異常症(DSH)が疑われ、従来の遺伝子検索で変異が同定されなかった患者(計16名)に対してエクソーム解析を施行した。その結果、Hermansky-Pudlak症候群4型, 6型, 9型(HPS4, 6, 9)の症例をそれぞれ1例ずつ遺伝学的に診断することができ、合計で3つのnovel mutationを発見した。特にHPS9は世界で第3例目,アジアでは初の症例であり、学術的意義は非常に高いと考える。また、DSH疑い症例2例において責任遺伝子であるADAR遺伝子に既報告の変異を認め、遺伝学的にDSHと診断した。 続いて、新たに診断しえたHPS4, 6, 9の患者、および過去に診断したHPS1の患者より毛髪サンプルを頂き、電子顕微鏡的・生化学的にメラニンの形態・組成を解析した。電子顕微鏡検査では、全てのHPS症例においてメラニンの数、サイズ、成熟度は低下しており、その程度はHPS1,HPS4において特に顕著であった。生化学的解析では、total melanin量は健常コントロールと比較して全例で低下していたが、HPS6では比較的保たれていた。また、全例でユーメラニンに対してフェオメラニンの比率が若干有意になっており、特にベンゾチアジン骨格のフェオメラニンは著明に上昇していた。ベンゾチアジン骨格のフェオメラニンの量はHPS1症例で最も高く、その次にHPS4症例で高かった。HPS1遺伝子, HPS4遺伝子は共にBLOC-3のサブユニットをコードする遺伝子であり、BLOC-3の機能不全により肺線維症や肉芽腫性大腸炎など致死的な合併症を引き起こされることが知られている。本研究におけるメラニンの形態学的観察、生化学的解析結果はBLOC-3のメラニン生合成、輸送における重要性を強調するものであった。
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