研究実績の概要 |
昨年度に実施した眼皮膚白皮症疑い症例に対するエクソーム解析、および患者の毛髪を用いたメラニン分析の結果について、Pigment Cell and Melanoma Research誌に投稿し、受理された(Okamura et al. Pigment Cell Melanoma Res 31: 267-276, 2018.)。また、同エクソーム解析により、OCA6の原因遺伝子であるSLC24A5遺伝子にcompound heterozygoteで変異を持つ患者が新たに同定された(同サブタイプは未だ日本人患者の報告がない)。一方の変異はスプライシング異常を伴うものであり、もう一方はミスセンス変異であった(現時点では非公表)。それぞれ別の親由来の変異であったが、特にミスセンス変異に関しては機能的意義が不明であったため、マウスを用いて機能解析を行うこととした。現在、CRISPR/Cas9技術を用いて当該遺伝子のノックアウトマウス、およびミスセンス変異のノックインマウスの作出に成功し、その機能解析を行っているところである。 一方で、エクソーム解析は網羅的ではあるが、コスト・データ量の問題から遺伝性色素異常症が疑われる患者に対してルーチンで行うべき手法ではないことを再認識した。そこで、今後は色素異常に関わる遺伝子に焦点を絞り、Target resequencingによって網羅的かつ経済的な遺伝子解析系を立ち上げているところである。Preliminaryなデータではあるが、この解析手法により従来の方法で診断不能であった症例約30例中、半数以上の遺伝学的確定診断をすることに成功している。今後はこの手法を用いて患者の遺伝子診断を継続するとともに、患者の病態を通じて色素に関わる遺伝子の機能解析、ひいては患者の治療につながる研究をしていきたいと思う所存である。
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