研究課題/領域番号 |
16K19708
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 大資 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90770826)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンパ流 / 乾癬 / イミキモド / STAT3 / 表皮肥厚 |
研究実績の概要 |
リンパ流の障害が乾癬やアトピー性皮膚炎にどのような影響を与えるのか、これまでマウスを用いた研究はほとんどなされていない。カポジ肉腫ウイルス遺伝子をリンパ管内皮細胞に発現したマウスはリンパ管が存在するもののリンパ流が障害されており、リンパ浮腫や胸水の貯留を来す。このマウスを用いて、本年度はマウス乾癬様皮膚炎におけるリンパ流の役割について解析した。具体的には、剃毛したマウスの背部と耳にイミキモドクリームを連日塗布して皮膚炎を誘導し、人間に用いるPASIスコアと類似の評価法で皮膚炎を解析した他、組織学的検討、サイトカイン発現の検討などを行った。リンパ流に障害のあるマウスでは、day 6において臨床的に落屑が目立ち、PASIスコアが上昇していた。耳の厚さもday 4以降、リンパ流に障害のあるマウスのほうが有意に厚くなっていた。組織学的には有意に表皮が肥厚しており、STAT3のリン酸化している細胞の数が多かった。しかし予想と反し、リンパ球や樹状細胞などの浸潤細胞の数には大きな差はなかった。定量的PCRの検討ではサイトカインの発現はむしろ低下しており、表皮の増殖をサイトカインから説明することは困難であった。リンパ流に障害があるためにサイトカインが貯留していることが考えられるため、mRNAレベルではなく、タンパクレベルで検討することを予定している。また、リンパ流に障害があると表皮細胞がサイトカインに過剰に反応して増殖している可能性も考えられ、化学発癌による系で差が認められるかどうか、実験の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カポジ肉腫ウイルス遺伝子をリンパ管内皮細胞に発現したマウスは成長とともに胸水を来し、何割かは自然に死んでしまうため数を増やすことが難しい。本年度はマウスケージの制限もあり、実験に用いるマウスを増やすことが困難であった。 本年度中にイミキモド皮膚炎の検討を終了する予定であったが、正確な機序の特定に至っておらず、来年度以降も検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ流に障害があるマウスでは、表皮の増殖刺激に対する反応に異常がある可能性が判明した。実際、人間のリンパ浮腫においても、表皮の過形成や有棘細胞癌の発生が知られている。そこでマウスに発癌物質を塗布する化学発癌の系において、リンパ浮腫が表皮細胞の増殖に与える影響を検討する。 また、これまでの予定にあるように、アトピー性皮膚炎モデルにおけるリンパ浮腫の影響も、来年度以降検討していく予定である。
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