研究課題
リンパ流の障害が表皮の肥厚にどのような影響を与えるのか、これまでマウスを用いた研究はほとんどなされていない。カポジ肉腫ウイルス遺伝子をリンパ管内皮細胞に発現したマウスはリンパ管が存在するもののリンパ流が障害されており、リンパ浮腫や胸水の貯留を来す。昨年度のイミキモド皮膚炎の結果(リンパ流に障害のあるマウスでは、イミキモド皮膚炎の表皮肥厚を含めた症状が悪化するが、皮膚炎の発症に関わるサイトカインのmRNAレベルでの発現はなかった。ただし、表皮細胞でのリン酸化STAT3の発現が上昇しており、蛋白レベルでのサイトカインの貯留が想定された)を受け、本年度は、リンパ流の障害が表皮肥厚と表皮細胞の腫瘍形成を誘導する化学発癌のモデルに対して与える影響について検討を行った。化学発癌のモデルとしては、DMBAを背部皮膚に単回塗布し、その後、週2回TPAを背部塗布に継続塗布する系を用い、1-20週まで腫瘍数や腫瘍の大きさを検討することとした。リンパ流の障害があるマウスと野生型マウスで新生する腫瘍の個数には差がなく、組織学的にもどちらのマウスでも良性の乳頭腫と悪性の有棘細胞癌の発生が確認された。しかし、7週以降の最大の腫瘍の長径、11週以降の腫瘍の占有面積に関して、リンパ流に障害のあるマウスで有意に大きいことが分かった。昨年度のイミキモド皮膚炎の系と同様に、リンパ流の障害があると、表皮細胞がサイトカインに過剰反応して、増殖している可能性が示唆された。
3: やや遅れている
カポジ肉腫ウイルス遺伝子をリンパ管内皮細胞に発現したマウスは成長とともに胸水を来し、何割かは自然に死んでしまうため数を増やすことが難しい。本年度はマウスケージの制限もあり、実験に用いるマウスを増やすことが困難であった。また、化学発癌の実験系は1度の実験で5か月程度必要となる長期のモデルであり、繰り返すことのできる実験の数に限界があった。本年度中にイミキモド皮膚炎に関しても並行に進めて、検討を終了する予定であったが、正確な機序の特定に至っておらず、来年度以降も検討が必要である。
イミキモド皮膚炎、化学発癌モデルの解析を継続し、リンパ浮腫が表皮細胞の増殖に与える影響、詳細なメカニズムについて検討する。
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