研究課題
リンパ流の障害が表皮の肥厚にどのような影響を与えるのか、これまでマウスを用いた研究はほとんどなされていない。カポジ肉腫ウイルス遺伝子をリンパ管内皮細胞に発現したマウスはリンパ管が存在するもののリンパ流が障害されており、リンパ浮腫や胸水の貯留を来す。一昨年度のイミキモド皮膚炎の結果(リンパ流に障害のあるマウスでは、イミキモド皮膚炎の表皮肥厚を含めた症状が悪化するが、皮膚炎の発症に関わるサイトカインのmRNAレベルでの発現変化はなかった)を受け、リンパ流の障害のあるマウスの皮膚では、蛋白レベルでサイトカインの貯留が起きているという仮説を立てていたが、本年度、申請者は実際に炎症局所でのサイトカインの蛋白レベルがリンパ流に障害のあるマウスで上昇していることを確認した。また、昨年度の表皮細胞の腫瘍形成を誘導する化学発癌のモデルの結果(リンパ流の障害があるマウスと野生型マウスで新生する腫瘍の個数には差はなかったが、7週以降の最大の腫瘍の長径、11週以降の腫瘍の占有面積に関して、リンパ流に障害のあるマウスで有意に大きかった)から、イミキモド皮膚炎の系と同様に表皮肥厚や表皮発癌に関与するサイトカインの蛋白レベルでの貯留が起きている可能性が示唆されていた。本年度、さらに詳細な解析を進め、リンパ流の障害があるマウスでは、発症した腫瘍の悪性度も上昇しており、その原因として、IL-6やTNF-α、IL-23などの発癌を誘導するサイトカインの蛋白の貯留を確認することができた。以上の結果から、リンパ流の障害は皮膚の炎症や表皮肥厚、表皮の発癌を誘導するサイトカインの貯留を誘導し、さまざまな炎症関連の障害を遷延すると考えられた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Journal of Dermatology
巻: 未収載 ページ: 未収載
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