研究課題
本研究では、1)皮膚悪性リンパ腫におけるTh2優位な腫瘍微小環境の形成に寄与する因子の解析、2)皮膚悪性リンパ腫におけるB細胞の役割の解析、3)皮膚悪性リンパ腫細胞の新たな自己分泌因子の同定とその役割の解析を通して、皮膚悪性リンパ腫の病態形成に関わる因子を包括的に解析し、皮膚悪性リンパ腫の新規治療法を提案することを目的としている。今回我々は、皮膚悪性リンパ腫の中で代表的な疾患である菌状息肉症、セザリー症候群を対象に、Th2反応を促進するサイトカインIL-25および新たな自己分泌分子であるcyclophilin Aの解析を行った。まず、菌状息肉症、セザリー症候群の患者の病変局所、血清中ではIL-25の発現が上昇しており、病勢と相関していることを見出した。また、IL-25はIL-25受容体を発現している菌状息肉症の細胞株からのTh2サイトカインであるIL-13産生を誘導していることを発見した。さらに、セザリー症候群の症例の中には、末梢血中腫瘍細胞がIL-25受容体を発現している症例があり、やはりIL-25はそれらの腫瘍細胞からIL-13産生を誘導していることも分かった。以上の結果から、IL-25が菌状息肉症、セザリー症候群のTh2優位な腫瘍微小環境の形成に寄与していると考えられた。続いて、我々は菌状息肉症、セザリー症候群の腫瘍細胞がcyclophilin Aとその受容体であるCD147を発現していることを見出した。さらに、菌状息肉症、セザリー症候群の腫瘍の細胞株の上清中にcyclophilin A阻害薬を加えたところ、腫瘍細胞の増殖が抑制されたことから、cyclophilin Aがオートクリンに腫瘍細胞の増殖を促していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、1)皮膚悪性リンパ腫におけるTh2優位な腫瘍微小環境の形成に寄与する因子の解析、2)皮膚悪性リンパ腫におけるB細胞の役割の解析、3)皮膚悪性リンパ腫細胞の新たな自己分泌因子の同定とその役割の解析を通して、皮膚悪性リンパ腫の病態形成に関わる因子を包括的に解析し、皮膚悪性リンパ腫の新規治療法を提案することを目的としている。当初の目的のうち、Th2優位な微小環境の形成に寄与する因子の解析は、ほぼ完了し、自己分泌因子についても順調に解析は進行している。
IL-25の解析については、ほぼ完了しており、論文を作成中である。Cyclophilin Aの解析については、オートクリンによる自己増殖の際に、働いているシグナル系の同定、in vivoにおけるcyclophilin A阻害薬、抗CD147中和抗体などの治療効果を解析する予定としている。B細胞の役割の解析については、IL-10産生制御性B細胞の解析を行う予定としている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Acta Derm Venereol
巻: 未定 ページ: 未定
10.2340/00015555-2623.
J Dermatol
10.1111/1346-8138.13820