研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)の増悪時、皮膚常在細菌叢の菌の種類が著しく減少し、黄色ブドウ球菌が過半数を占めると近年報告されている。同じく皮膚常在菌の一つであるカンジダ菌による皮膚炎では、皮膚末梢神経が直接カンジダ菌を認識し、ある種の神経ペプチドを介して、真皮樹状細胞に働き感染防御に働くと報告された。しかし、ADで浸潤する好塩基球と末梢神経の関係については明らかになっていない。そこで、我々は黄色ブドウ球菌を塗布し慢性皮膚炎を誘発し、末梢神経と好塩基球の役割について検証した。 まず、好塩基球の役割を検討するため、好塩基球除去マウスを用いた。ジフテリアトキシン投与により、好塩基球を特異的に除去できるマウスを使用した。好塩基球除去マウスでは黄色ブドウ球菌誘発の皮膚炎モデルにおける、耳介腫脹が減弱した。次に、末梢神経の役割を明らかにするため、薬剤による除神経を実施した。薬剤的除神経モデルでは、耳介腫脹が減弱し,皮膚への好塩基球浸潤数も低下した。このことから、黄色ブドウ球菌誘発皮膚炎モデルで、末梢神経が好塩基球の皮膚への浸潤に関与する可能性が示唆された。 続いて黄色ブドウ球菌の末梢神経に対する作用を検討するために、in vitroで脊髄後根神経節細胞を培養し、黄色ブドウ球菌で刺激した。刺激した脊髄後根神経節細胞の培養上清中にケモカインの産生を認めた。このことから、皮膚炎症時に好塩基球と末梢神経が相互作用し、炎症増悪に寄与している可能性が示唆され、今後さらに詳細に検討していく予定である。
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