本研究は蕁麻疹の中でも特にコリン性蕁麻疹と日光蕁麻疹に焦点を絞って診断及び治療法の確立を目指すものである。前年度申請者らはコリン性蕁麻疹の中で眼瞼浮腫を伴う1型を報告し、このタイプでは汗アレルギーが原因となり得ることを示した。今年度の研究では汗アレルギーが原因となるコリン性蕁麻疹では、従来より施行されていたヒスタミン遊離試験を用いて汗アレルギーを検査する手法よりも、好塩基球刺激試験(basophil activation test: BAT)を用いての検査がより高い診断精度を持って自己汗皮内テストによる結果と相関することを見出し、学会にて発表した。今まで問診等の診察のみで判断していたコリン性蕁麻疹の診断をよりラボベースで可能とするものである。また本研究を遂行する中で培ったBATの系を用いて研究者らは他のアレルギーの原因精査についてもBATが応用出来ることを見出し、ムカデ咬症におけるアナフィラキシーショックにおいてIgEを介した1型アレルギー反応の関与を示すなど皮膚アレルギーの進歩に貢献できたと考える。 前年度の研究においては残る日光蕁麻疹の分野において、BATの系を用いて患者血清並びに健常血清に紫外線や可視光線を照射した後患者血球と反応させることでCD203cの上昇が起こることを見出しており、今年度の課題として採血検査によるex vivoスクリーニング手法の確立として、新鮮な血球を用いた従来の手法のみならず、凍結血清など一定期間保存が可能な検体を用いての手法を確立していく必要があると考えた。このため研究者らは健常血球にコリン性蕁麻疹患者より採取した血清を反応させることで、健常者の血球でも患者血球と同様な振る舞いを起こすことを見出した。日光蕁麻疹での実用化には煩雑性等解決すべき課題はあるが、刺激誘発型蕁麻疹において採血検査での診断の可能性を示せた点で本研究の意義があると考える。
|