研究課題/領域番号 |
16K19734
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
中村 直美 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), フューチャー・ステップ研究員 (10733058)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Toll様受容体3 / 即時型アレルギー |
研究実績の概要 |
Toll様受容体(TLR)3は、皮膚のバリア異常や経皮感作、炎症性サイトカイン産生などの過程に関与し、それらを病態とするアトピー性皮膚炎や、食物アレルギーにおいて、重要な役割を果たしている可能性が推察される。しかし、これらの疾患におけるTLR3の果たす役割はいまだ解明されていない。本研究は、Tlr3 ノックアウト(KO)マウスを用い、即時型アレルギーにおけるTLR3が果たす役割とその免疫学的機序を解析し、アトピー性皮膚炎および食物アレルギーなどのアレルギー疾患における、新たな治療法の可能性を明らかにすることが目的である。 まず、Wild Typeマウス、Tlr3 KOマウスの腹部皮膚を除毛し、テープストリッピングを行い、卵白アルブミン液を浸したろ紙を皮膚に貼付し、経皮感作モデルマウスを作成した。感作から10日後に卵白アルブミン抗原液を経口投与すると、数分以内に直腸温の低下を伴ったアナフィラキシー反応が誘発される。この即時型アレルギー反応を、直腸温の低下やsymptom scoreを用いて評価したところ、Tlr3 KOマウスでは、即時型アレルギー反応が減弱した。ELISAを用いて、感作後のマウス血清中の卵白アルブミン特異的IgE値を測定したところ、両群ともに感作が認められ、有意差はみられなかった。 再現性をみるため再度施行したが、2回目は感作は成立していたが、両群ともに明らかなアナフィラキシーが誘発されなかった。感作後の血清中の卵白アルブミン特異的IgE値は、Tlr3 KOマウスよりWild Typeマウスの方が低い傾向であった。そこで、3回目はチャレンジの際の卵白アルブミン抗原液の経口投与量を増量したが、両群ともに軽度の直腸温の低下を認め、感作後の血清中の卵白アルブミン特異的IgE値は、Tlr3 KOマウスよりWild Typeマウスの方が低い傾向であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1回目の実験ではTlr3 KOマウスでは、即時型アレルギー反応が減弱していたが 再現性をみるため、繰り返し施行したところ、2回目は感作は成立していたが、両群ともに明らかなアナフィラキシーが誘発されなかった。そこで、3回目は反応を誘発しやすくするためにチャレンジの際の卵白アルブミン抗原液の経口投与量を増量したが、両群ともに軽度の直腸温の低下を認めた。感作後のマウス血清中の卵白アルブミン特異的IgE値も、Tlr3 KOマウスよりWild Typeマウスの方が低い傾向であった。 手技が確立できていないためか、マウスによって個体差があるためか、実験の再現性が得られておらず、進捗状況がやや遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
Wild Typeマウス、Tlr3 KOマウスを用いて経皮感作、即時型アレルギーモデル作製の手技を確立する。作成後に、ELISAを用いて、マウス血清中の卵白アルブミン特異的IgG1, IgG2, IgE値を測定し、経皮感作にTLR3が関与しているかを解析する。さらにTLR3が経皮感作にどのような機序で関与するのかを調べるため、表皮ケラチノサイト、樹状細胞、T細胞、B細胞などの個々の細胞の機能を調べる。具体的には、表皮ケラチノサイトの免疫染色、PCRなどにより、TSLP・IL-33・IL-18・IL-25などの表皮由来のサイトカイン等の発現を調べる。樹状細胞の遊走能・成熟能・抗原提示能や、T細胞の分化・増殖能、B細胞の抗体産生能・クラススイッチについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1回目の実験ではTlr3 KOマウスでは、即時型アレルギー反応が減弱していたが 再現性をみるため、繰り返し施行したところ、2回目は感作は成立していたが、両群ともに明らかなアナフィラキシーが誘発されなかった。そこで、3回目は反応を誘発しやすくするためにチャレンジの際の卵白アルブミン抗原液の経口投与量を50mgから100mgに増量したが、両群ともに軽度の直腸温の低下を認めた。感作後のマウス血清中の卵白アルブミン特異的IgE値も、Tlr3 KOマウスよりWild Typeマウスの方が低い傾向であった。 手技が確立できていないためか、マウスによって個体差があるためか、実験の再現性が得られていないので、進捗状況がやや遅れている状態であり、試薬、物品の購入が当初の計画より少なくなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
Wild Typeマウス、Tlr3 KOマウスを用いて経皮感作、即時型アレルギーモデル作製の手技を確立する。作成後に、ELISAを用いて、マウス血清中の卵白アルブミン特異的IgG1, IgG2, IgE値を測定し、経皮感作にTLR3が関与しているかを解析する。さらにTLR3が経皮感作にどのような機序で関与するのかを調べるため、表皮ケラチノサイト、樹状細胞、T細胞、B細胞などの個々の細胞の機能を調べる。具体的には、表皮ケラチノサイトの免疫染色、PCRなどにより、TSLP・IL-33・IL-18・IL-25などの表皮由来のサイトカイン等の発現を調べる。樹状細胞の遊走能・成熟能・抗原提示能や、T細胞の分化・増殖能、B細胞の抗体産生能・クラススイッチについて検討する。これらの本年度に行えなかった分の実験を次年度に行い、遅れを取り戻して実験を進めていく予定である。
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