研究課題
前年度までに三次元モデルヒト表皮において細胞外ATP処理により尋常性乾癬や炎症性皮膚疾患に関与することが報告されているHB-EGF、AREG、PTGS2およびIL-33等の新規遺伝子群の発現が促進されることを明らかにした。本年度は、細胞外ATP処理三次元モデルヒト表皮から細胞質および核よりタンパク質を抽出し、主にwesternblot法にて各遺伝子群のタンパク質レベルでの発現について観察した。まず、その結果、ATP処理後2時間後においてHB-EGFおよびPTGS2の発現が促進されることが明らかとなった。一方、AREG、IL-33はヒト表皮において恒常的に発現しており、mRNAの発現は上昇しているもののタンパク質レベルでの差異を確認することはできなかった。また、EGFファミリーの産生が起こっていることから、EGF受容体を介した細胞内シグナル伝達経路の解析について更に検討を行った。EGF受容体を介したシグナル伝達は、Ras-ERK経路、JAK-STAT経路およびPI3K-Akt経路を活性化することが知られている。細胞外ATP処理三次元モデルヒト表皮において、活性化されるシグナル伝達経路を確認したところ、Ras-ERK経路およびPI3K-Akt経路で時間依存的な活性化を誘導した。また、JAK-STAT経路の活性化は認められなかった。以前、ヒト表皮の基底層のみをターゲットに細胞外ATPの機能解析を行った際には主にJAK-STAT経路の活性化を認めたことから、三次元モデルヒト表皮においては異なる経路を活性化することが明らかとなった。Ras-ERK経路およびPI3K-Akt経路の活性化は、主に細胞増殖の促進や細胞保護作用を有すことから、表皮に物理的・化学的刺激が加わった際に放出される細胞外ATPは、三次元モデルヒト表皮における初期のストレス応答として作用することが示唆された。
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