研究課題/領域番号 |
16K19745
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
井上 維 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 共同研究員 (30750442)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 皮膚腫瘍学 |
研究実績の概要 |
申請者らは、マウス皮膚の発がん実験で、Ppp6c (PP6の触媒サブユニット)が、皮膚癌の抑制遺伝子であることを世界で初めて証明した。我々が得たPpp6c欠損皮膚にDMBA処理をして発生した腫瘍には、全例H-ras 変異が入っていたまた、下記のように悪性黒色種では、Ppp6c遺伝子変異とN-rasが共存していた。従って、PP6には活性化RASによる腫瘍化を抑える働きがあるのではと考えた。ほん研究では、この仮説の実証をするために開始したものである。その課程で興味のある現象「変異型KRASとPpp6cの欠損を同時に起こすと著しい腫瘍形成が起こる」を見いだした。本研究ではこの現象の確認と、そのメカニズム解明のための解析を行っている。 米国の2つのグループが、メラノーマ組織の約10 %にPpp6c遺伝子変異(LOHを伴う)があり、かつその変異はN-rasまたはB-raf変異と共存することを発表した。この事は、PP6の機能喪失が、N-rasまたはB-raf変異と共に、悪性黒色腫発生に働くことを示唆するものであった。この報告は、Ppp6cがメラノーマのがん抑制遺伝子であることを示唆する。しかし、その証明はない。Ppp6cコンディショナル欠損マウスを持っているのは我々のみであるので、一刻も早くそれを証明する必要があると考え、メラノサイト特異的にPpp6c欠損と変異B-rafを発現するマウスを作成し、Ppp6cが、メラノーマの癌抑制遺伝子として働くか否かを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験1:皮膚扁平上皮特異的に、2重変異(変異型KRAS+Ppp6欠損)、変異型KRAS、Ppp6c欠損を起こすマウス、それぞれK14-CreTAM; KrasLSL-G12D/+; Ppp6cflox/flox、K14-CreTAM; KrasLSL-G12D/+; Ppp6c+/+そしてPK14-CreTAM; Kras+/+; Ppp6cflox/floxマウスの作成に成功した。現在これらのマウスを用いて、変異型krasによる腫瘍発生へのPpp6c作用機構を解析中である。 実験2:メラノサイト特異的に2重変異(変異型Braf+Ppp6欠損)、変異型BRAFを起こすマウスを作成するために、メラノーマ誘導マウス(B-rafF-V600E/+;Ptenloxp/+;Tyrosinase-CreERT2)と、Ppp6cflox/floxマウスとの掛け合わせを開始しており、順調に産子が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
実験1:皮膚扁平上皮特異的に、2重変異(変異型KRAS+Ppp6欠損)を起こすことによって得られた腫瘍細胞において、KRASの下流であるMEK/ERK系と、PI3K/AKT系について、そのシグナルへの影響を調べる。腫瘍細胞由来の細胞株を樹立し、2重変異(変異型KRAS+Ppp6欠損)と変異型KRASをもつケラチノサイトの細胞増殖、腫瘍形成能を解析する。 実験2:メラノサイト特異的2重変異(変異型Braf+Ppp6欠損)マウスが得られれば、メラノサイト特異的に、BrafV600Eの発現とPpp6c遺伝子欠損を起こし、Ppp6c遺伝子欠損が、Pten欠損同様に、腫瘍形成をドライブするか否かを調べる。口腔、肛門、右耳、背中などの部位における腫瘍の有無・性質を検討する。
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