研究課題/領域番号 |
16K19747
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
天野 大樹 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (00591950)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 内側視索前野 / 腹側被蓋野 / ドパミン |
研究実績の概要 |
げっ歯類動物では新生児に対して養育などの利他的行動と喰殺と呼ばれる攻撃行動が認められる。C57BL/6J系雄マウスの場合、離乳期以前では養育行動が認められるが、7週齢以降ではほとんどが攻撃行動を示す(Amano, 2017)。 内側視索前野は養育行動に対して中心的な役割を果たしていることが報告されてきた。これまでに内側視索前野の活性化を促す人為的処置を雄マウスに加えた時には、攻撃行動が停止すること、および養育行動が一部で出現することを見出されてきた。しかし内側視索前野は養育行動以外にも様々な種類の行動に関与することが知られており、さらにトレーサー実験から投射先は多様であることも見出されている。その中でもMichael Numanらのグループは内側視索前野の下流にある腹側被蓋野、およびさらに下流の側坐核が養育行動に対して重要である可能性を報告している(Numan, 2006)。そこで本研究では雄マウス内側視索前野から腹側被蓋野、側坐核へとつながる神経回路の特性と行動との相関を明らかにすることを目的としている、。 我々は去勢マウスの側坐核においてin vivoマイクロダイアリシス法による経時的なドパミン遊離レベルの測定を行った。仔マウスを提示し、巣への連れ戻し行動を示したマウスにおいてドパミン遊離レベルの変化は認められなかった。 次にアデノ随伴ウイルスを用いて光感受性イオンチャネル・チャネルロドプシンを内側視索前野に発現させ、腹側被蓋野からパッチクランプ法による単一細胞記録を行った。一部の神経細胞で光刺激に依存して起こるGABA作動性シナプス電流が観察された。さらに内側視索前野からの投射繊維を青色光照射によりin vivo行動中に刺激する実験系を立ち上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光遺伝学的手法によりin vivo行動試験中に内側視索前野からの投射繊維を特異的に刺激する実験系を確立した。すでに内側視索前野から腹側被蓋野周辺への入力を経路特異的活性操作することによって、一部のマウスが行動変化することを観察している。
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今後の研究の推進方策 |
内側視索前野から腹側被蓋野への入力繊維をin vivo行動試験中に刺激し、仔マウスに対する行動様式の観察を引き続き行い、DREADDs法により腹側被蓋野神経細胞の活動を操作した時の行動様式と比較する。これに加え電気生理学的検討もさらに進め、腹側被蓋野神経細胞のうちどのような細胞種が内側視索前野から投射を受けるか明らかにする。 予想に反し去勢マウスでは養育行動の一つであるレトリービング行動に対応したドパミン遊離レベルの上昇は見られなかったが、今後クラウチング(仔への被い行動)など養育行動の中でも異なるタイプの行動との相関を観察する。
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備考 |
http://www.pharm.hokudai.ac.jp/yakuri/
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