統合失調症22名、健常者42名を対象に、7分間開眼時の安静時脳活動をMEG(Elekta Neuromag 全頭型306ch)により測定した。測定データのノイズを除去後に電流源推定を行った。各周波数帯域(Delta~Gamma)で脳部位間の相関行列を計算し、グラフ理論解析にて疾患群と対照群で比較検討した。 脳領域間の相関行列を群間で比較したところ、Delta帯域とGamma帯域で差が認められた。このためDelta帯域とGamma帯域について各関心領域をfMRIで確立されているネットワークテンプレートを用いて分類し、各ネットワーク内の接続数と各ネットワーク間の接続数を計算し比較した。結果としてDelta帯域、Gamma帯域ともdefault mode network (DMN)、ventral attention network (VAN)のネットワーク内の接続数が統合失調症で過剰になっており、DMN-VAN間のネットワークの接続数が統合失調症で過剰になっていた。脳全体のネットワーク指標であるGlobal efficiency、Local efficiency、Small world性には群間差を認めなかった。 今回の検討により統合失調症の安静時ネットワークの異常は、脳全体における変化ではなく、特定のネットワークにおける変化として観察された。統合失調症では健常者と比して、DMNおよびVANがDelta、Gamma帯域においてネットワーク内で過剰な結合をしており、双方のネットワーク間の接続数も増加していることが示された。統合失調症ではDMNの内的情報処理とVANの注意配分処理における異常があり、さらに内的情報処理と注意配分処理が過剰に同期して処理されていることを示している。今後はネットワーク構造の変化と精神症状との関連について検討を進める予定である。
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