研究課題
覚せい剤などの違法薬物の乱用による精神・神経障害は、日本だけではなく、世界中で大きな社会問題になっている。特に、覚せい剤の長期使用後の離脱症状(うつ病やフラッシュバックなど)に対する根本的な治療法が無く、新規治療法の開発が不可欠である。本研究では、覚せい剤の長期使用による精神症状における病態メカニズムを詳細に調べるために、最新のプロテオミクスiTRAQを用いて、覚せい剤精神病の病態に関わる新規分子ターゲットを探索する。今年度では、まずiTRAQ又は次世代シークエンサーの解析より、覚せい剤の繰り返し投与によってマウス側坐核で変化する蛋白質や遺伝子を幾つが発見した。また、自発運動量、逆耐性や条件付け場所嗜好性試験などの行動実験を用い、覚せい剤の長期使用で引き起こす行動異常は、可溶性エポキシド加水分解酵素が関与している可能性が判った。さらに、可溶性エポキシド加水分解酵素の阻害剤を投与によって、覚せい剤の繰り返し投与で誘発した行動異常を改善することも判った。現在、可溶性エポキシド加水分解酵素の遺伝子欠損マウスを用い、覚せい剤精神病における可溶性エポキシド加水分解酵素の役割とその詳細な分子メカニズムの解明の研究を進めている。来年度には、研究成果をまとめ、学会発表及び論文を投稿する予定です。
2: おおむね順調に進展している
覚せい剤を繰り返し投与した後のマウスの脳における、幾つの新規分子ターゲットを見出した。さらに、その阻害剤が覚せい剤の長期投与による行動異常を改善することも確認しております。このように、本研究は順調に進展している。
今後の研究では、遺伝子欠損マウスなどの方法を用い、覚せい剤の長期使用によって行動異常に関わる新規分子の詳細なメカニズムを調べ、覚せい剤精神病の病態解析及び新規治療薬の開発を結び付けていく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
East Asian Arch. Psychiatry
巻: 26 ページ: 45-51
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 113(13) ページ: E1944-52
10.1073/pnas.1601532113