研究実績の概要 |
統合失調症の発症に大きな効果量を持つ稀なリスク遺伝子を確定することを目的とし、近親婚の両親を持つ統合失調症罹患同胞2人を有する家系のエクソーム解析、および症例・対照研究を行った。 統合失調症罹患同胞2人、はとこ婚かつ非罹患者である両親の計4人を対象者とし、それぞれの血液から精製したDNAサンプルを、Hiseq2500システムを用いてエクソームシークエンスした。その結果、計213,038個の変異が検出された。これらを、常染色体上、シークエンス深度が10以上、罹患同胞が潜性遺伝形式で共有、効果量が高度または中等度、アレル頻度が5%未満、という条件でフィルタリングし、全ての条件に合致したHEBP2遺伝子Arg140Gln変異およびUPK2遺伝子Arg152Cys変異を候補リスク変異として同定した。 これらの候補リスク変異が統合失調症の発症に大きな効果量を持つかどうかを確認するため、症例・対照サンプル(2,837対2,639)をTaqMan法でタイピングした。またデータベース上に登録されている1,208および104の健常日本人サンプルを対照サンプルに追加した。これらのサンプルを用いた症例・対照研究の結果、両候補リスク変異とも統合失調症との有意な関連は認められなかった。 本研究で同定した候補リスク変異は統合失調症の発症に大きな効果を持つ変異とは言えなかったが、一般的には収集が困難である貴重なサンプルを用いてエクソーム解析を実施することができた。今後、検出された変異から別の候補リスク変異を選択し、関連解析を進めていく予定である。統合失調症のリスク変異であることが確定されれば、統合失調症の病態解明に向けた分子基盤を得られ、新たな治療法の開発に結び付けていくことも可能となる。
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