研究実績の概要 |
うつ病の糖代謝に関するPET研究では島、大脳辺縁系、基底核で低下しているという報告が多い(Su et al, 2014)。また、うつ病の脳血流に関するPET研究では一貫した見解が得られておらず、脳糖代謝の変化とも一致しないことが多い (Dunn et al, 2005)。一般に、健常者や双極性障害では脳糖代謝と脳血流は均衡関係にあるが、うつ病では両者の間に不均衡が起きている (Drevets et al, 2000)。そのため、脳血流-糖代謝不均衡の機序を明らかにすることでうつ病の病態生理の解明に寄与する可能性が高く、さらにうつ病のバイオマーカーとなる可能性もある。一方、SSRIなどの抗うつ薬は脳糖代謝や脳血流に影響を及ぼし、SSRIに反応する群では背外側前頭前野の脳糖代謝が上昇し (Kennedy et al, 2001)、帯状回の脳血流が増加する(Joe et al, 2006)。一方、脳はアストロサイトを介してエネルギー源であるブドウ糖を血液中から取り込んでいる。また、最近の死後脳研究によると、うつ病ではアストロサイトのEndfeetが約50%減少し、脳血管内皮細胞の被覆率が低下しているという報告がある (Rajowska et al,2013)。その結果、うつ病では脳糖代謝の低下を来している可能性が指摘されている。また、SSRIはアストロサイトに直接作用することがかねてより指摘されてきた (Czeh& Benedetto, 2013)。 そこで、本研究では、強制水泳モデルを用いて脳血流-糖代謝の不均衡を確認する。続いて、Endfeetにいかなる変化が生じるのか、また、その変化は抗うつ薬によって修復されるのかを検討する。そして、うつ病の病態解明に寄与すると共に、アストロサイトを標的とした新しい治療法開発に向けて基礎データを得ることを目指している。
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