研究課題
統合失調症の発症率や重症度に性差があることは知られているが、その生物学的機序は不明である。また、統合失調症の発症にはDNAメチル化などのエピジェネティクスが深く関連していると考えられているものの、現時点ではGWASなどのゲノム配列解析に比して知見は遅れている。我々は二つの異なるDNAメチル化頻度解析手法(DNAメチル化頻度網羅的解析・メチル化特異的定量PCR法)とヒト末梢血サンプルセットを用いて、男性統合失調症の約3割において、X染色体上のあるCpGアイランドが異常に高メチル化(通常の10%前後に比して90%前後)している現象を見出した。同領域と重なるTAF1遺伝子はX染色体性知的障害やジストニアとの関連は示唆されているが、統合失調症との関連は報告がなかった。本研究期間内において、まず予備的研究で対象とした上記のサンプルについて、MassARRAYを用いて、同CpGアイランド内のすべてのCpGサイトのメチル化頻度を測定し、予備的研究のメチル化異常の結果を再現することに成功した。また異常高メチル化を認めた男性統合失調症12名については、再採血を行い、異常高メチル化が維持されていることを確認した。さらに異常高メチル化群の末梢血について、関連遺伝子TAF1のmRNA発現量を測定し、対照群との比較を行った。これらの知見について現在論文化を進めている。ヒト男性由来神経幹細胞の培養系を確立し、CRISPR/Cas9法にて異常高メチル化領域のDNA配列の機能欠失を行い、細胞表現型にどのような影響があるかも検討中である。その他、本研究と関連して得られた統合失調症患者の染色体末端テロメア構造やY染色体モザイク欠失についての解析結果や、網羅的メチル化頻度データを用いてエピジェネティック老化指標を測定した研究について、それぞれ期間内に英文雑誌にて報告した。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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