研究課題
末梢血白血球テロメア長やミトコンドリアDNAコピー数は様々な精神疾患や心理社会的ストレスにより異常を来すため、精神疾患やストレスの病態機序への関連及びバイオマーカーとして注目されているが、精神疾患やストレス負荷の最悪の転帰といえる「自殺」とテロメア・ミトコンドリアDNAについての研究は未だ報告がなかった。H28年度は、自殺者末梢血・死後脳において、テロメア長やミトコンドリアDNAコピー数の異常を見出すことができた。特に若年自殺者におけるテロメア短縮が顕著であった。本成果を学術雑誌Scientific Reportsにて発表した。H29年度は「若年自殺≒若年期における極度のストレス暴露状態」と捉えることにより、幼若期ストレスを負荷したラットをモデル動物として準備し、同ストレスラットの脳・血液試料のテロメア長・ミトコンドリアDNAコピー数を測定した。幼若期ストレスラットの前頭前皮質や海馬のテロメア長は対照群に比して顕著に短縮していた。最終年度は、反復拘束ストレスラットの系でも同様の測定を行い、またテロメラーゼ逆転写酵素の発現についても解析する。また自殺者死後脳・末梢血試料におけるテロメア関連の遺伝子領域(例:テロメラーゼ逆転写酵素、テロメラーゼRNAコンポーネント)のCpGサイト(特にCpGアイランド)についても測定し、非自殺者群との比較を行う。上記データをまとめ、最終的な考察を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
すでにヒト末梢血・死後脳サンプルのテロメア長・ミトコンドリアDNAコピー数の解析が終了し、成果を論文として発表できた。また幼若期ストレス・反復拘束ストレスラットおよび対照群ラットの前頭前皮質・海馬・扁桃体・末梢血での測定も順調に進んでいる。さらには自殺者死後脳・末梢血試料のメチル化解析も遂行中である。
本研究にて得られた成果について、今後はテロメアやミトコンドリアの機能に関わるとされる遺伝子のSNPやメチル化領域の解析を同一試料にて行うことで、「自殺とテロメア・ミトコンドリア異常」の分子生物学的機序にアプローチしていくことを目標とする。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 3176
10.1038/s41598-017-03599-8
https://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/88534