研究課題/領域番号 |
16K19771
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土本 利架子 九州大学, 医学研究院, 特別教員 (70635474)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 双極性障害 / 脳磁図 / neural oscillation |
研究実績の概要 |
近年、社会的損失の観点からも精神障害は重要な疾患である事が指摘されている。しかし、精神疾患、特に統合失調症や双極性障害を代表とする内因性精神疾患に関しては、いまだにその病態が解明されていないのが実情である。客観的指標が確立されていない為に、実際の臨床では主に患者の問診や診察時の様子などを元に診断を下す事がほとんどである為、診察する医師によって診断が異なり治療方針が異なる、というような事も起こりうる。正確な診断を早期に下す事ができない為に治療が後手に回り、将来的な予後に影響を与えるという事も生じる可能性がある。そこで我々は、精神疾患の診断や治療指標を確立する事を目的に、代表的な精神疾患である統合失調症、双極性障害、そして単極性うつ病を対象に神経生理学的検査をこれまでに進めてきた。空間分解能、時間分解能に優れた脳磁図を用いて、安定した反応である、聴覚定常反応 (Auditory steady state response:ASSR) の測定を継続しており解析を進めている。これまでの我々の研究成果として、① 健常者に比して統合失調症でのASSR反応が低下している、② 健常者に比して双極性障害でのASSR反応が低下している、という所見を認めたが、③ 単極性うつ病ではそのような反応低下は認めず、健常者に示す反応に近い所見が得られた。また、我々の研究室の平野らの研究では、統合失調症では、聴覚刺激中の自発活動が健常者に比べて異常に増加している、という所見も得られている。以上の結果をふまえて、我々はそれぞれの群について、さらに被験者を増やして測定を続け、それらのデータを元に、より一層深めた解析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、聴覚刺激だけでなく、視覚刺激を使った定常反応(Steady state visual evoked potentials : SSVEP)を測定する計画であったが、技術的問題などから困難な点が多く、実際の測定は難しい状況である。ASSRに関しては、これまで同様継続して測定を実施できており、着実に被験者数を増やしている。しかし、その解析はまだ不十分である為、今後進めて行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ASSRの測定を継続していき、解析をすすめていく。また、これまでとは異なる観点による結果分析も検討予定である。SSVEPに関しては、技術的問題が解決できるよう努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の測定に関して、我々の研究室で並行して測定している他の検査と同時に実施することが多い為に、検査を行うにあたって必要な経費(被験者への謝金、脳磁図使用料)が新たに生じない状況があった。
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次年度使用額の使用計画 |
検査実施に必要な経費として使用する予定である。また、解析に必要なソフトの購入にも使用する予定である。 さらに、結果について積極的に学会等で発表をしていく予定であり、その費用としても使用していく。
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