研究実績の概要 |
オリジナルコンピュータソフト(Jcores)を用いた認知機能リハビリテーション(VCAT-J)を実施する群(介入群)と通常の外来治療を継続する群(対照群)とに年齢と性別を層別化し無作為割り付けを行った。 対象者については、介入群は16名、対照群は15名の合計31名であった。介入の前後に神経認知機能をBACS-Jで、精神症状をPANSSで、社会的機能をLASMIで評価し、さらにMRIも実施した。全脳のボクセルベースの分析を用いて、皮質灰白質容積の有意な変化を検出し、また皮質の容積変化とVCAT-Jによる神経認知機能の改善との相関について評価した。 VCAT-J介入群は、BACS-Jにおける言語流暢性(F=7.12, p=0.012)とコンポジットスコア(F=4.21, p= 0.049)において対照群よりも有意な認知機能の改善を認めたが、PANSSおよびLASMIでは両群間で有意差は認めなかった。また、VCAT-J介入群では対照群よりも右海馬体積の有意な増加を示した(p<0.001)。さらに言語流暢性スコアと右海馬体積の変化は、正の相関があった(r=0.53, p=0.001)。 我々は、VCAT-Jが右海馬の体積を有意に増加させ、このような変化が言語流暢性スコアの変化と正の相関を有することを見出した。本研究の結果は、VCAT-Jが海馬の可塑性を介して神経認知機能の改善を誘導する可能性を示唆した。 また白質微細構造の変化については拡散テンソル画像を用いて現在、解析中である。
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