研究実績の概要 |
精神疾患の発症に神経発達期におけるグリア細胞の異常が指摘されているが詳細不明である。これまでに、ミクログリアでニュレグリン1(NRG1)が発現していること、自閉スペクトラム症(ASD)モデルマウスにおいてミクログリア由来NRG1が増加しているという我々が観察した知見(ikawa et al., Brain Behavior and Immunity 2017)から、発達期における過剰なNRG1シグナルが、その後のASD症状に影響しているのではないかと仮説した。また、認知機能や臨界期の誘導に抑制性神経回路の重要性が報告されていることから、本研究では、臨界期におけるNRG1過剰シグナルが、抑制性ニューロンの発達へ与える影響および社会性や認知機能などに与える影響について解析している。 まずNRG1投与の効果を確認するために、C57BL/6マウスに組み換えヒトNRG1をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて希釈し、生後2日(P2)からP10までの9日間、1.0μg/kg体重で皮下投与し、対照群として同様の方法で同量のPBSを投与した。P11で脳を摘出し、MACS磁気細胞分離にてミクログリアを単離しRT-PCRを行った。しかし、予想と反してNRG(NRG1 typeⅠ, NRG1 typeⅡ, NRG1 typeⅢ, NRG2, NRG3)は両群において有意差を認めなかった。また、同様に炎症性サイトカイン(IL-1b, TNFa, IL-6)、BDNF(exon2, exon4, common)などは両群においても有意差を認めなかった。
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