研究課題/領域番号 |
16K19781
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
大塚 剛司 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (60760395)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 時計遺伝子 / Rev-erbα / 前頭前皮質 / 双極性障害 / セロトニン |
研究実績の概要 |
本研究課題では「双極性障害発症に関わる時計遺伝子Rev-erb αがセロトニン神経系制御機構を介して情動行動を制御している」という仮説の元、2016年度は以下のような実験を展開した。まず、時計遺伝子Rev-erb α ノックアウト(KO)マウスを用いて、情動行動解析を行ったところ、KOマウスは躁状態を反映する様なポジティブな表現型と同時に、うつおよび不安を反映するネガティブな表現型を示し、情動行動に双極性を持つことがわかった。次に、時計遺伝子Rev-erb αが脳のどの部位で高発現しているか確認するため、情動と関連した様々な脳部位におけるRev-erb αの発現レベルを比較した。その結果、Rev-erb αは前頭前皮質で高発現し、脳内で重要である可能性が示唆された。さらに蛍光二重染色を行ったところ、マウスの神経細胞にRev-erb αが局在していることから、Rev-erb αはマウスの前頭前皮質における神経細胞で高発現し、重要な働きを占めることが示唆された。 次に前頭前皮質におけるRev-erb αのターゲットを決めるため、DNAマイクロアレイ解析を行い、クラスター分析を行ったところ、KOマウスは神経の活動や発達、伝達などの神経活動に関わる遺伝子の多くに発現レベルの変動が認められた。この結果に従い、UPLC/MSを用いて前頭前皮質における神経伝達物質を測定したところ、KOマウスはセロトニン含量が大きく減少を示し、さらにセロトニンレセプターの一つであるHtr2aの発現量も減少していた。このことから、Rev-erb αの欠損は、前頭前皮質におけるセロトニン神経系の活動低下を導くことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにRev-erb αKOマウスを用いて、特定脳部位の絞り込みやセロトニン神経系の機能低下を証明した。おおむね計画通りに進んでいるが、今後の課題として、Rev-erb αが前頭前皮質のセロトニン神経系に、どのように関わっているかを解明する必要がある。そのため、現時点での達成度はこのようになった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はセロトニンの代謝経路に着目し、その代謝経路のどの段階にRev-erb αが関わっているか検討を行う。また、通常のC57BL6Jマウスの体内時計を人為的に乱したマウスモデルを用い、リチウムなどの精神安定薬および抗うつ薬の投与により情動行動が制御可能か検討を行う、またその際のRev-erb αなどの時計遺伝子の解析も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由として、新たな遺伝子改変動物の導入が遅れたことが挙げられる。本大学では新たな遺伝子改変動物を導入する際、「和歌山県立医科大学における動物実験の実施に関する規定」に基づき、「遺伝子組み換え実験計画申請書」および「動物実験計画申請書」の承認が必要である。これらの書類の承認が遅れたことから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画として、まず遺伝子改変動物を導入し、その実験に関わる物品購入に使用する予定である。また、2017年度にも国際学会を含めたいくつかの学会参加を予定しており、旅費としての使用を予定している。そして、本研究を国際誌に投稿する際の英文校閲費および論文投稿費に充てる予定である。
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