研究課題/領域番号 |
16K19788
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
篠塚 一貴 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (50549003)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 養育行動 / 霊長類 / 内側視索前野 / マーモセット |
研究実績の概要 |
平成29年度は、子の養育行動における内側視索前野の役割を検討するため、マーモセット4個体に対して内側視索前野の機能抑制実験を実施した。家族単位で飼育しているマーモセットの上のきょうだい個体に対して、母親の出産予定日のおよそ1カ月前に、内側視索前野にウイルスベクターを注入した。ウイルスベクターはAAV-DJ8-TRE-eTeNT.EGFPとAAV-DJ8-CMV-rtTAV16を等量混合したものを用いた。これにより、内側視索前野でドキシサイクリン依存性にテタヌストキシンが発現し、機能が抑制されることが期待された。 母親の出産後に、きょうだい個体に対して新生児を刺激とした子の回収テストを実施した。始めの5日間は、被験体に対して操作を加えずテストを実施し(DOX-)、その後の5日間はドキシサイクリンを連日経口投与してテストを実施した(DOX+)。子の回収までの潜時と回収後の背負い行動の程度を検討したところ、ドキシサイクリン投与の有無による明確な変化は認められなかった。このため、DOX+期間の終了後に、被験体の内側視索前野にN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)を注入し、不可逆的に機能を抑制する手術を実施した。子の回収テストを再度5日間実施したところ、子の回収までの潜時は変化せず、回収後に子を背負う時間が顕著に減少した。 以上のことから、霊長類においても、内側視索前野が養育行動の正常な発現に重要であることが明らかとなった。また、子の回収までの潜時は変化せず、回収後の背負い行動のみが減少したことから、内側視索前野は特に子に対する寛容性と関連することが示唆された。可逆的抑制の効果は認められなかったが、実験後に内側視索前野でテタヌストキシンが発現していることは確認できたため、行動に影響する程度の機能抑制が生じなかったものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに4個体の内側視索前野の機能抑制のサンプルを得ることができており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、ウイルスベクターや他の技術を用いた可逆的機能抑制が可能かどうかを引き続き検討する予定である。また、内側視索前野以外の領域でも機能抑制実験を行い、対照個体を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
気化麻酔器等、計画していた物品が当研究費とは別に研究室に導入され、それを共用したために次年度使用額が生じた。より精度の高い薬液微量注入のため、電動マイクロインジェクターを導入する計画である。
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