研究課題/領域番号 |
16K19790
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
久保田 学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 博士研究員(任常) (30760368)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グルタミン酸 |
研究実績の概要 |
ヒト脳内のAMPA受容体の分布を定量するため、新規リガンド11C-Compound Aおよび11C-HMS011を用いたPET撮像画像をそれぞれ数名ずつ取得し、定量解析を行った。解析に際してはPETデータおよび動脈血採血によりそれぞれ得られた脳内の時間放射能曲線と血中の時間放射能曲線に対し、モデル解析を用いて分布容積を算出した。なお、最新の解析法に関する知識が要求されるため、国際学会・研修会等にて情報収集・技術習得を行った。結果、11C-Compound Aの分布容積は明確な脳領域差を示したが、一方で代謝物その他解析に影響を与える因子に関するさらなる検討が必要であった。他方、11C-HMS011は大脳皮質のAMPA受容体への一定の特異的結合を示したが、dynamic rangeは比較的小さかった。 また健常者に対して、シナプスにおいてAMPA受容体とcouplingする代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)および脳内グルタミン酸について検討を行った。mGluR5のPET撮像に関しては、PETリガンド11C-(E)ABP688を用いた。過去のmGluR5-PET研究において検査値の変動が報告されているため、 mGluR5-PETおよびMRSを同一被験者にそれぞれ同日2スキャンずつ実施し、解析を行った。結果、脳内mGluR5および脳内グルタミン酸の変動に生理的要因が影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の計画通り、健常者に対してPETおよびMRS撮像を行い、脳内AMPA受容体および脳内グルタミン酸の計測・定量評価を行った。なお、様々な要素が測定値に影響を与える可能性が考えられたため、AMPA受容体と密接に関わるmGluR5受容体の定量評価などを合わせて複合的に検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
PETを用いたヒト脳内のAMPA受容体の定量評価には様々な要素が影響を与えるため、健常者における解析の緻密化・最適化を行う。AMPA受容体を脳内グルタミン酸神経伝達の動的な変化のなかで理解する必要があるため、PET、MRSを組み合わせて包括的にグルタミン酸神経伝達の評価を行う。さらに、脳内グルタミン酸、またAMPA受容体と密接に関わるmGluR5受容体の変動に生理的要因が影響を与える可能性が考えられたため、これらの要因について、translationalなアプローチを交えてより詳細に検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度分の予算として、画像解析用ワークステーション・パソコンの購入を予定していたが、多数の画像データの取得よりも少数の画像データを基にしたモデル解析の詳細な検討を優先したため、これらは当該年度に購入しないこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の予算のうち、使用しなかった分は、平成29年度に繰り越して使用する予定である。
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