研究課題
これまでに得られたヒトにおけるAMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)のPET撮像データおよび代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のPET撮像データ、並びにMRSによる脳内グルタミン酸量(Glutamate concentration: Glu)のデータをもとに、脳内グルタミン酸神経伝達の機能評価のための包括的解析を行った。その結果、食事摂取が脳内mGluR5の状態に一定の影響を与える可能性が示された。そこでさらにヒトで得られた知見をもとに、覚醒ラットに対してmGluR5-PET撮像を行い、食餌摂取を挟んだ同日2スキャンおよび食餌摂取を挟まない同日2スキャンを行って参照領域法を用いたkinetic analysisによりmGluR5結合を定量した。結果、脳内mGluR5結合の変動が前者と後者で異なること、すなわち食餌摂取の有無で異なることが明らかになり、ヒトで見られた現象が再現された。これらの結果をあわせると、mGluR5をターゲットにしたPETの活用により脳内グルタミン酸神経伝達の鋭敏な変化が検出可能となり、疾患早期におけるグルタミン酸神経伝達の変化を定量できる可能性が考えられた。今回得られた知見を学会にて発表した。さらにグルタミン酸、ドーパミンを含めた脳内神経伝達機能の特徴を踏まえて統合失調症の病態解明に結びつけるための方策について、学会発表を通して活発な議論を行った。
2: おおむね順調に進展している
これまで得られた結果から、AMPA受容体とcouplingするmGluR5の変動の特徴をPETで捉えることができ、したがってmGluR5 PETの活用により疾患早期におけるグルタミン酸神経伝達の変化を定量できる可能性が示された。そのため研究の着眼点をAMPA受容体と密接に関わるmGluR5にシフトさせている。しかし、上述のように重要な予備的知見が得られており、研究の趣旨としてはおおむね順調に経過していると考えている。
これまでに得られたAMPA受容体およびmGluR5のPETデータ、MRSデータをもとに解析の緻密化を行い、さらなるtranslationalなアプローチを追加して疾患病態に関わる脳内グルタミン酸神経伝達の変化について解析・検討を行う。統合失調症の病態解明にあたり、疾患およびその症状・認知機能における脳内グルタミン酸・ドーパミン神経伝達の役割の包括的理解を目指す。
平成29年度分の予算として、ヒト画像解析用ワークステーション・高性能パソコンの購入を予定していたが、必要なラットのデータ解析を優先したため、当該年度に購入しないこととした。平成29年度の予算のうち、使用しなかった分は、平成30年度に繰り越して使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
EJNMMI Research
巻: 7 ページ: 63
10.1186/s13550-017-0313-0.