平成28年度は、脳脊髄液 (CSF) 中エタノールアミンのうつ病バイオマーカーとしての有用性を明らかにするため、ヒト患者で疾患特異性や症状依存性の検討を行なった。その結果、うつ病のみならず統合失調症でもCSF中エタノールアミンは有意に低下していること、うつ病患者の電気けいれん療法 (ECT) 前に比べてECT後のCSFエタノールアミン濃度は有意に増加しており、うつ病症状評価尺度スコアの改善量とCSFエタノールアミン変化量とが有意に相関することが明らかとなった。脳画像解析においては統合失調症患者に比べて、うつ病患者では白質密度とCSF中エタノールアミン濃度がより強く相関する結果が明らかとなった。 平成28~29年度は、複数のうつ病動物モデルにおける構成妥当性を、Wistar Kyoto系ラット/慢性拘束ストレス負荷ラット/リポポリサッカリド (LPS) 投与ラットを用いて検討した。その結果、Wistar Kyoto系ラットではうつ様行動は見られたものの、CSF中エタノールアミンの有意な上昇が明らかとなり、ヒトとは一致しない結果となった。また、慢性拘束ストレス負荷ラットではうつ様行動が誘導できず、CSF中アミノ酸関連分子についても有意な変化は確認できなかった。LPSの反復投与モデルラットでは有意なうつ様行動の誘導が観察でき、現在、CSF中のアミノ酸関連分子の解析を続行している。 平成29年度は、エタノールアミンに着目した治療法開発のため、ラットにエタノールアミンプラズマローゲン添加飼料を4週間投与し、うつ様・不安様行動の改善がみられるかを検討した。その結果、不安様行動が有意に改善した。しかし、うつ様行動については有意な変化を認めなかった。N数の少なさが影響している可能性があり、今後も継続的な検討が必要になると考えられる。現在、CSF中のアミノ酸関連分子の解析を続行している。
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