研究課題/領域番号 |
16K19794
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
吉池 卓也 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (40647624)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 双極性障害 / 大うつ病性障害 / 覚醒療法 / グルタミン酸 / D-サイクロセリン / 神経可塑性 |
研究実績の概要 |
覚醒療法は即時に抗うつ効果をもたらす双極性障害及び大うつ病性障害の新たな治療法として期待されており、グルタミン酸神経伝達修飾が重要な作用機序と推測されている。一方、難治性克服や再発予防において課題を残し、作用機序にも不明な点が多い。これら気分障害の病態生理においてグルタミン酸神経伝達修飾を介した神経可塑性が重要な役割を担うと考えられており、近年我々はグルタミン酸受容体部分アゴニストであるD-cycloserine(DCS)が覚醒依存的に神経可塑性を促進することを確認した。本研究課題はDCS による覚醒療法の増強効果をランダム化臨床試験において検討し、治療反応性規定因子を同定することを目的とする。臨床指標を主要評価項目とし、生理学的指標を副次評価項目とする。 研究代表者の異動により研究実施体制を再度整備する必要性が生じた。入院病棟における実施場所の確保、看護師への教育及び協力要請を行い、研究計画を再度検討した。異動後に改めて当該研究機関による倫理審査委員会による承認を受け、数名において予備的な検討を行った。難治性双極性障害患者において覚醒療法単独のきわめて高い急性効果及び安全性が確認されたが、維持効果は不十分であった。また、生理学的評価の実施可能性を確認し、機能的磁気共鳴画像(fMRI)による評価も実施する計画に変更した。今後、DCS併用療法における有効性及び安全性を確認し、症例数を重ねる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
旧所属機関において本治療法の実施に必要なハード面の整備、関係医療者への教育及び協力要請を行い、倫理審査委員会の承認を得て予備的検討を実施し、これらを踏まえ正式な対象患者の組み入れを開始する予定であった。しかし、研究代表者の異動により一連の手続きを現所属機関において改めて実施する必要性が生じ、また脳画像評価法の再検討など実施計画の見直しを行ったことで想定より多くの時間を要した。覚醒療法単独における効果及び安全性とともに、評価項目測定の実施可能性が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
組み入れの円滑化を図り、覚醒療法-DCS併用療法の有効性及び安全性を確認し、目標症例数の半数を目指しデータ集積を推進する。DCSの投与計画の再検討も状況により慎重に行い、予備解析結果に基づき実施計画を最適化することで、DCSが覚醒療法への抗うつ反応にいかなる影響をもたらすかを明らかにしていく。
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