研究課題
覚醒療法は低用量ケタミンに次ぐ即効性及び高い治療効果を有する抗うつ治療法であり、双極性障害及び大うつ病性障害の新たな治療戦略として一定の臨床的知見が蓄積されている。他方、難治性克服や再発予防の点で課題を残し、作用機序についても不明な点が多い。ケタミンと同様、覚醒療法の即時抗うつ反応においてもグルタミン酸神経伝達修飾が重要な役割を果たすと推測されている。本研究課題は、覚醒依存的に神経可塑性の促進に寄与すると示唆される、グルタミン酸受容体部分アゴニストD-cycloserine(DCS)を用い、覚醒療法の効果促進の可能性とともに、治療反応メカニズムを検討することを目的とする。研究代表者の海外留学決定に伴い、DCS併用療法の導入を見合わせ、暫定的に単独覚醒療法の有効性及び治療メカニズムを検討する計画に変更した。全断眠(36時間)と回復睡眠(12時間)から成るサイクルを1週間のうちに3回反復する覚醒療法プロトコルは、少数例の検討において確実な寛解率を示した。副次指標として治療反応と短時間知覚の関連を検討したところ、抗うつ反応と内的時間の促進に有意な時間的相関が確認され、短時間間隔の推定機能が覚醒療法の治療メカニズムにおいて一定の役割を担う可能性が示唆された。さらに、前頭皮質への生理学的影響を簡易脳波計により検討したところ、回復睡眠の浅睡眠量に治療反応群と非反応群の間で異なる変化パタンが窺われ、断眠に対する恒常性機構の反応性の違いが治療効果に寄与する可能性が示唆された。
4: 遅れている
研究代表者の異動に伴い研究実施体制の再整備を続けるなか、研究代表者の留学が決まったため、DCS併用療法の導入を見送り、可能な限り単独覚醒療法の症例を重ね、治療反応性に関わる要因の予備的な検討を行う計画に暫定的に変更せざるを得なかった。
今後、DCS併用療法の導入開始を目指すが、状況により研究協力者の協力のもと単独覚醒療法への組入れを進め、未だ知見の乏しい単独覚醒療法の神経生理学的機序を多様な神経画像手法を活用し多面的に検討する計画へ変更することも視野に入れ、課題達成を目指す。
研究消耗備品に残余があり購入を先送りしたため。
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