研究課題
昨年度に引き続き、スポットスキャニング陽子線治療におけるFMISO-PETを用いた線量低減の実施可能性、有用性に関して検討を行なった。線量増加及び線量低減のシミュレーションが最終的に10症例にて実施された。リスク臓器の比較においては、口腔、健側耳下腺などの平均線量はIMRTよりも陽子線治療の方が低い値であった。この線量の差が与える影響について、normal tissue complication probability (NTCP)モデルを用いて味覚障害、唾液流量低下(客観的評価)、口渇(主観的評価)、嚥下障害、胃瘻ないしは経鼻胃管依存という5項目の副作用発生率の比較を行ったところ、いずれも陽子線治療の方が予測される副作用発生率が低い値であった。これらは線量増加シナリオでも、線量低減シナリオでも、同様に認められた。副作用発生率の数値の差(delta NTCP)が10%を超える副作用項目の個数は、線量増加シナリオでは9症例において3項目以上認められた。線量低減シナリオにおいては8症例において3項目以上認められた。低酸素を標的とした放射線治療を行うにあたり、陽子線治療が最も適していると考えられた。これらの結果は、第60回米国放射線腫瘍学会年次総会にアクセプトされ、2018年10月に発表された。また、低酸素癌や難治性癌の放射線感受性に関するin vitroでの実験系を検討し、試行した。NAM Jin Min特任助教と大学院生を交えてのディスカッションを継続的に行い、低酸素・難治性癌に対する線量分割や線質の変化に関する基礎的な知見を得た。
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臨床放射線 Japanese Journal of Clinical Radiology
巻: Sep;63(9) ページ: 961-967