研究課題/領域番号 |
16K19798
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平田 健司 北海道大学, 医学研究科, 助教 (30431365)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | IIMU / thymidine phosphorylase / FDG / 頭頸部癌 |
研究実績の概要 |
本研究はチミジンホスホリラーゼ (TP)のインビボ・イメージング製剤である123I-IIMUを頭頸部癌患者に投与して臨床的有用性を示すことを目的としたが、平成28年度内には123I-IIMUを患者に投与することができなかった。その理由は以下のとおりである。本研究費の申請時点で、123I-IIMUのFirst-in-human(FIH)臨床試験が継続中であったが、123I-IIMU標識合成の原料である123I-NaI溶液(メーカーからの購入品)の組成(NaOH濃度)が変更された。また、これに起因すると考えられる合成収率の低下が認められた。これらのため、123I-IIMU標識合成条件(中和条件、塩交換条件等)及び精製条件の再検討が必要となり、合成条件の最適化検討を平成28年度中に行なった。その結果これまでに中和条件、塩交換条件を含む標識合成条件、及び精製条件の再設定をほぼ完了し、現在再現性の確認を行なっている。再現性の確認終了後、標準操作手順書等の変更を行なうとともに、倫理委員会の承認を経て、FIH臨床試験を再開する予定である。FIHが終わり次第、本研究課題の頭頸部癌患者への投与を開始する予定である。 患者にIIMUを投与できなかったため、この期間は125I-IIMUを用いて動物実験として非アルコール性脂肪肝炎(NASH)のモデルマウスに対して125I-IIMUを投与し、その集積量およびTP発現量をコントロール動物と比較検討した。 さらに、本研究でIIMUと比較対称としているFDG PETの臨床画像を用いて後向き研究を行った。FDG PET画像の定量的評価法としてmetabolic tumor volume (MTV)やtotal lesion glycolysis (TLG)を算出し、また不均一性を定量化するtexture analysis を行い、予後予測能を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
概要で示したとおり123I-IIMUの合成に問題を生じたため、臨床試験を予定どおりに行うことができなかった。他方、125I-IIMUの動物実験と、FDGの臨床データの後向き解析を行ったので以下に報告する。 動物実験としては、125I-IIMUがNASHの診断薬剤として応用可能どうかを検証するため、NASHモデルマウスを作成し①TPの肝発現量、②125I-IIMUの肝集積量を調べ、コントロールマウスと比較した。モデルマウスはC57BL/6マウスにメチオニン・コリン欠乏食を2週間与えることで作製した。TP遺伝子およびタンパク質レベルでの発現量をRT-PCR法およびWestern blot法により調べた。NASHマウスの肝臓では、TP発現が遺伝子およびタンパクレベルで低下していた。また②については、125I-IIMUを尾静脈内投与し30分後の各臓器の放射能をガンマカウンターで測定した。NASHマウスでは125I-IIMUの肝集積量が有意に減少することを見出した。 また、IIMUと比較検討するFDG PETの解析法を最適化するため、後向き臨床研究として甲状腺癌FDG PET画像を解析した。甲状腺癌全摘後・放射性ヨード内用療法前で転移を有する299症例を対象に、従来指標のSUVmaxのほか、MTV、TLGを臓器別に測定した。さらに不均一性を定量化するtexture解析として、36種類の指標を算出し、患者の生命予後と比較した。結果としてSUVmaxに比べてMTV、TLGは強い予後予測因子であり、さらに臓器別に算出して臓器別に異なる係数を掛けて合算した「重み付けMTV」は単純MTVに比べて強い予後予測能を示した。さらにtexture 解析によって得られた不均一指標のうち14指標が有意に予後と関連しており、FDGの腫瘍への集積の強さや体積だけでなく、不均一性が予後と関連していることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている123I-IIMUの合成検討を続け、合成の再現性が確認できしだい、標準操作手順書等の変更を行い、倫理委員会の承認を経た後、First-in-human(FIH)臨床試験を再開する予定である。FIH臨床試験は現在2例まで投与完了しており、今後6例を追加して計8例となった時点で安全性評価を行う予定である。FIH臨床試験によって安全性が確立ししだい、本研究課題である頭頸部癌患者における123I-IIMUの有用性を明らかにするため、頭頸部癌患者への投与を含む前向き臨床試験を開始する予定である。この臨床試験はヘルシンキ宣言や臨床研究に関する最新の倫理指針等の各種ガイドラインに従って研究を進めていく予定である。当初、目標症例数を2年間で22例としていたものの、前述のとおりFirst-in-human試験が完了ししだい本研究課題に取り掛かるため、実際には22例よりも少なくなる見込みであるが、研究期間内に可能な限り多くの症例を集める予定である。データを集約した後に、当初の検討項目に従ってデータを解析する。 (1) 123I-IIMU SPECT検査から得られる腫瘍の123I-IIMU取り込み度にもとづいて、5-FUに対するresponderとnon-responderとを区別できるかどうかを検討する。 (2) 123I-IIMU SPECTで得られる123I-IIMU取り込み程度と、免疫染色で得られるTP発現量とを比較検討し、動物実験の結果と同様に123I-IIMU集積量がTP発現量を反映するかどうかを明らかにする。 (3) 123I-IIMUの取り込み度とFDG PET-CTから得られる情報を複合的に解析し、患者の生命予後をもっとも正しく予測できるモデルを構築する。 (4)FIH臨床試験に続き検査薬123I-IIMUの安全性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
123I-IIMUの合成に問題が生じ、当該臨床試験を進めることができなかったため、当初見込んでいた123I-IIMU合成費用、同じ患者に対して行う予定であったFDG PET-CTに関わる費用、そして患者の病理検査(免疫染色)にかかる費用がいずれも発生しなかった。また、画像解析目的に購入予定であったワークステーションも、臨床症例の蓄積ができない時点では直ちに必要ではないと判断して次年度に購入を持ち越した。これらの理由により平成28年度の使用額は予定使用額を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は現在行っている123I-IIMUの合成検討を続け、合成の再現性が確認できしだい、標準操作手順書等の変更を行い、倫理委員会の承認を経た後、First-in-human臨床試験を再開する予定である。First-in-human臨床試験は現在2例まで投与完了しており、今後6例を追加して計8例で安全性評価を行う予定である。First-in-human臨床試験によって安全性が確立ししだい、本研究課題である頭頸部癌患者における123I-IIMUの有用性を明らかにするため、頭頸部癌患者への投与を含む臨床試験を開始する予定である。前向き臨床試験として行い、ヘルシンキ宣言や臨床研究に関する最新の倫理指針等の各種ガイドラインに従って研究を進めていく予定である。
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