研究課題/領域番号 |
16K19799
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
志水 陽一 京都大学, 医学研究科, 助教 (90634212)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低酸素 / イメージング |
研究実績の概要 |
固形腫瘍内に形成する低酸素領域は腫瘍の悪性度化、薬物・放射線治療抵抗性に関与するため、腫瘍内の低酸素状態をより詳細に評価することが重要である。腫瘍低酸素領域を非侵襲的に評価する方法として、2-nitroimidazoleを母体骨格に有する薬剤を用いた診断法が注目されているものの、その低酸素領域描出機序の詳細は不明であった。平成28年度は2-nitroimidazoleを母体骨格に有する薬剤のうちPimonidazoleについて、低酸素環境下組織への集積機序について評価した。まず担がんマウスにPimonidazoleを尾静脈より投与し、投与0.5、2、4時間後に腫瘍を摘出、および凍結切片化を行った。得られた凍結切片についてイメージング質量分析(IMS)測定およびPimonidazoleの免疫組織染色を行った。その結果、Pimonidazoleは投与早期より腫瘍組織内において還元型Pimonidazole-グルタチオン抱合体として存在することをIMSにより明らかにするとともに、その分布は投与4時間後まで免疫組織染色と一致することを見出した。この結果は2-nitroimidazoleを母体骨格に有するFMISOを用いた以前の検討結果とほぼ同等であったことから、2-nitroimidazoleを母体骨格に有する薬剤は低酸素環境下の細胞内において取り込まれたのち還元され、さらにグルタチオン抱合体を形成して細胞内に滞留していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究計画当初の目標である2-nitroimidazoleを母体骨格に有する薬剤は低酸素環境下の細胞内集積機序を明らかにすることが出来たことからおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は2-nitroimidazoleを母体骨格に有する薬剤の低酸素環境下におけるがん細胞取り込み量、代謝物(グルタチオン抱合体)生成量とがん細胞内グルタチオンおよびグルタチオン抱合関連生体分子の発現・活性度、およびグルタチオン抱合体の細胞外排泄に関与するトランスポーターの発現量との関連性について評価し、2-nitroimidazoleを母体骨格に有する薬剤の低酸素環境下がん細胞への集積におけるグルタチオン抱合反応の影響について解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は当初は予定していたよりも早く成果が出始めていたものの、年度途中に研究代表者が異動(北海道大学→京都大学)するなどの想定外の事態が起こったため、当初年度後期に実施し始める予定であった実験が遅延し、本実験に必要な試薬等の購入が次年度にずれ込むことになったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は低酸素環境下における-nitroimidazoleを母体骨格に有する薬剤のがん細胞取り込み量、代謝物(グルタチオン抱合体)生成量とがん細胞内グルタチオンおよびグルタチオン抱合関連生体分子の発現・活性度、およびグルタチオン抱合体の細胞外排泄に関与するトランスポーターの発現量との関連性について評価するための試薬、細胞培養用消耗品、実験動物などの購入、および本成果発表のための旅費に使用する予定である。
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