研究課題
頭蓋内照射後の小児がん生存者の約 50%に遅発性認知機能障害が生じ、学習障害、記憶障害、人付き合い困難、行動適応障害、長期にわたる教育・職業上の障害に苦悩している。Sugiyamaらによれば、頭蓋内放射線治療を受けた患者の大学進学率は約50% 程度であり、ほとんどが無職か、一度就職したものの最終的に離職している本研究は脳微細構造変化の検出できるMRI機能的画像を用いて、「放射線照射後遅発性認知機能障害」の病態を解明し、将来生じうる認知機能障害を予測したMRI機能画像検査法を明らかにする。小児がん頭蓋内放射線照射後10年以上経過した症例を対象とする。4月以降も前年度に引き続き、脳内の微細構造を、細胞内の制限拡散、細胞間の束縛拡散、そして脳脊髄液成分の自由拡散の3つのコンパートメントに分けて解析する非正規分布拡散画像の後処理の手法である Neurite orientation dispersion and density imaging (NODDI)、空間的に離れた脳領域間の内的な機能結合や,脳全体のネットワークとしての性質を評価することができるresting-state functional MRI(rsfMRI)、および認知機能テスト(成人知能検査WAIS-III、成人記憶検査WMS-R)のデータ収集を継続した。MRI機能画像データの収集、認知機能テストデータの収集は予定通り終了し、50症例のデータが得られた。現在は画像データをソフトウェアによる最適解析条件を検討しているところである。本研究により明らかとなる晩期認知機能障害の病態は、今後の小児がんの治療方針に大きく影響を与えうると思われる。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに50症例のデータ収集ができた。
MRI機能画像データの収集、認知機能テストデータの収集は予定通り終了した。現在は画像データをソフトウェアによる最適解析条件を検討しているところである。本研究の次年度の推進方策として、①画像データの最適解析条件の検討・決定、②NODDIやrefMRI画像解析の施行、認知機能テストデータの解析、③MRI機能的画像所見と認知機能障害との関係はnon parametric 相関性の検定により、照射後認知機能障害の病態を解明する、④研究成果の発表(学会発表・論文発表)を策定する。
購入予定の3D/4D 可視化画像解析用ソフトウェアが、販売業者の都合により、納品が遅れたため、次年度使用額が生じた。平成30年度に、当該ソフトウェアの購入費として使用する計画である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Ultrasound Med Biol
巻: 43 ページ: 607-614
10.1016/j.ultrasmedbio.2016.11.009.