適格条件を満たす4症例の再発頭頸部癌に対して硼素中性子補足療法(BNCT)を施行した.適格条件は次の4つである.①全身状態良好(PS 2以下)な85歳以下の症例,②局所進行頭頸部癌(T3-4N0M0)で手術による制御が困難な症例,③18F-BPA-PET検査で腫瘍/正常組織集積(T/N)比が2.5 以上の症例,④本研究の趣旨を書面および口頭にて説明を行い,書面にて同意の得られた症例. 4症例は全症例男性で,年齢は20から81歳(平均48歳)であった.原発部位は,鼻腔,篩骨洞,涙嚢,舌であり,組織型は扁平上皮癌2例,腺様嚢胞癌1例,横紋筋肉腫1例であった.全症例とも再発症例であり,初期治療や救済治療の一環として放射線治療が施行されていた.BNCTは京都大学原子炉実験所の医療照射用原子炉にて照射を行い,照射終了後は筑波大学附属病院に帰院した.全症例とも計画通りのBNCTを完遂できた. 経過観察期間15.9-40.9ヶ月(中央値24.4ヶ月)で,全症例が現病死された.局所制御は1症例で得られ,1症例で辺縁再発を認めた.Common Terminology Criteria for Adverse Events v.4.0におけるGrade 3以上の有害事象は,1症例にGrade 3の放射線粘膜炎,2症例にGrade 4の角膜炎を認めた.Grade 4の角膜炎を生じた2症例は,BNCTで根治を目指すには眼球障害が必発であることが予想されたため,事前に十分な説明のうえ治療の同意を得ていた.2症例とも眼球内容除去術を施行した. 本研究でBNCTを施行した4症例は,手術や外部照射など他の局所治療の適応がない症例であった.全症例とも現病死に至ったが,2症例は2年以上の生存期間が得られており,BNCTは再発頭頸部癌に対する有効な治療選択肢のひとつとなりうる可能性が示唆された.
|