本研究ではポジトロン放出核種と蛍光色素の両方で標識したマクロファージ標的イメージング薬剤を開発し、不安定プラーク検出薬剤としての有用性を評価することを目的とする。デキストランを母体骨格としたマクロファージ標的イメージング薬剤「DCM20」をRI標識し、マウス体内動態を調べたところ、DCM20は血中半減期が長く、半減期が110分と短いフッ素18 (F-18) による診断には適さないことが明らかとなった。そこで、分子量が約半分のデキストランを用いて「DCM10」を作製し、マウス体内動態を調べたところ、DCM10はDCM20に比べ速やかな血液クリアランスを示した。マンノース受容体を用いた結合阻害実験により、DCM10は高いマンノース受容体結合能を有していることが明らかとなった (Ki = 1.6 ± 0.05 nM)。続いて酸性pH下においてのみ蛍光を発する蛍光色素であるAcid Fluor ORANGE (AFO) で標識したDCM10 (AFO-DCM10) を作製した。培養マクロファージにAFO-DCM10を添加し、蛍光顕微鏡にて観察を行ったところ、マクロファージ細胞内においてのみ蛍光が確認された。このことから、AFO-DCM10はマンノース受容体結合後にマクロファージに取り込まれ、酸性の細胞小器官であるリソソームに集積することが示唆された。AFO-DCM10を動脈硬化モデルマウスに投与し、二時間後に大動脈を摘出し、蛍光イメージングを行ったところ、動脈硬化巣に一致してAFO由来の蛍光が観察された。さらに、DCM10をポジトロン放出核種である銅64 (Cu-64) で標識し、動脈硬化モデルマウスに投与し、ポジトロン断層撮影を行ったところ、動脈硬化好発部位である頸部領域に高い集積が認められた。以上の結果から、DCM10は不安定プラーク検出薬剤として有用であることが示された。
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