膵癌細胞panc-1に対して、X線、重粒子線を照射し、免疫チェックポイント関連蛋白PD-L1の発現をフローサイト、western blotにて確認した。照射線量、照射後の測定タイミングなど、幾つか条件を変えて実験を繰り返したが、PD-L1の有意な上昇は認められなかった。 インターフェロンγを用いた実験においては、PDL1の発現上昇は確認されたため、実験系自体は問題無いことが確認された。 膵癌以外の樹立された細胞株に対象を拡大し同実験を繰り返したところ骨肉腫のひとつの細胞株においてX線、重粒子線ともに線量依存性にPD-L1が発現されることが確認された。一方で、悪性黒色腫、頭頸部癌の数種の細胞株ではPD-L1の上昇はみられず、cell line によってX線や重粒子線に対する反応が異なることも確認された。 またpanc-1に対して抗癌薬gemcitabineを繰り返し暴露させて確立した化学療法抵抗性株panc-1-R、ならびに放射線感受性を示すmicroRNAのhsa-miR-34a-5pをtransfectionした細胞株panc-1-SについてX線、重粒子を照射し、PD-L1の発現をフローサイト、western blotにて確認したが、結果は安定せずPD-L1の有意な上昇は認めなかった。 X線照射に対するPD-L1の発現については当研究室の別チームで並列に実施していたプロジェクトで、骨肉腫細胞において二重鎖切断後のDNA損傷シグナルがChk1を活性させ、PD-L1が発現することを明らかにしている。本研究期間では膵癌細胞 panc-1でのChk1 pathwayについてまでは検証ができなかったが、Gemcitabineの暴露によりChk1のリン酸化が促進されるという報告もあり、膵癌においてもChk1の阻害がPD-L1の発現抑制につながる可能性が考えられる。
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