研究課題/領域番号 |
16K19810
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
萱野 大樹 金沢大学, 附属病院, 助教 (10547152)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | I-131内用療法 / 分化型甲状腺癌 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究によって、残存甲状腺組織を有しかつ転移病変を有する分化型甲状腺癌患者において、I-131内用療法前の診断的シンチグラフィでI-131内用療法の治療効果予測がある程度可能であることを示した。 分化型甲状腺癌患者において転移病変の検索目的に行われるI-131シンチグラフィおよびI-123シンチグラフィといった診断的シンチグラフィでは、甲状腺癌病巣へ十分に放射性ヨウ素を取り込ませるようにするため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を十分に上昇させる必要がある(一般的には30μIU/mL以上)。I-131内用療法の対象となる甲状腺全摘後の患者では甲状腺ホルモンを休薬することにより内因性TSHの上昇を図ることが可能であるが、超早期の分子標的薬の適応決定を目的とする本研究の対象患者は甲状腺組織が残存するため甲状腺ホルモン休薬による内因性TSHの上昇を図ることは不可能である。このため、診断的シンチグラフィを施行する際は、遺伝子組み換えヒト型TSH(rhTSH)を用いて外因性TSHを上昇させた上で検査をおこなう必要がある。 本年度(平成29 年度)の研究では、分化型甲状腺癌の転移病変の検出にrhTSHが有用かどうか検討した。転移病変を有する分化型甲状腺癌患者3名において、rhTSHを用いたシンチグラフィでの転移病変の検出能について調べた。3例中1例では肺転移およびリンパ節転移への放射性ヨウ素集積を認め病変検出が可能であった。残りの2例ではいずれも残存甲状腺組織への放射性ヨウ素の明瞭な集積は認めたものの、肺転移、骨転移、リンパ節転移といった転移病変への集積は認めなかった。 今回の結果からは、rhTSHを用いたシンチグラフィでも、転移病変の検出が可能である一方、ホルモン休薬法と比較して病変検出が劣る可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
残存甲状腺組織を有しかつ転移病変を有する分化型甲状腺癌患者において、I-131内用療法前の診断的シンチグラフィでI-131内用療法の効果予測が可能であることが示唆され(平成28年度)、また、rhTSHを用いることによって転移病変の検出がある程度可能であることが示唆された(平成29年度)。 本研究の主目的である分子標的薬の超早期適応決定を判断する検査の1つとして診断的シンチグラフィが有用な可能性が示唆されつつあり、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度、平成29年度の研究によって、甲状腺全摘後のI-131内用療法前の分化型甲状腺癌患者、すなわち残存甲状腺組織を有する患者において、I-131内用療法施行前の診断シンチグラフィでI-131内用療法の効果予測がある程度可能であり、また、転移病変の検出にrhTSHを用いたシンチグラフィが役立つ可能性が示唆された。残存甲状腺組織を有しかつ転移病巣を有する分化型甲状腺癌患者において、rhTSHを用いたシンチグラフィでI-131内用療法の効果を予測することが可能であれば、I-131内用療法を施行する前にI-131内用療法が不応性であることが判断でき、分子標的薬の適応を超早期に判断できる可能性があると考えられる。次年度(本研究の最終年度)は、rhTSHを用いたシンチグラフィによってI-131内用療法の治療効果の予測が可能であるかどうかを検討し、平成28年度と平成29年度に得られた結果もふまえ、rhTSHを用いたシンチグラフィによって分化型甲状腺癌における新規分子標的薬の超早期の適応決定が可能かどうかの最終結果をまとめる。
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