平成30年度の研究では、前年度に検討した転移を有する分化型甲状腺癌患者について、I-131内用療法前の遺伝子組み換えヒト型TSH(rhTSH)を用いた診断シンチグラフィ(rhTSH診断シンチグラフィ)とI-131内用療法の効果との関係について調べた。I-131内用療法前のrhTSH診断シンチグラフィで転移病変への集積を認めた1例については、I-131内用療法後シンチグラフィでも転移病変への集積を認め、かつI-131内用療法の効果も得られた。一方、I-131内用療法前のrhTSH診断シンチグラフィで転移病変への集積を認めなかった2例では、1例はI-131治療後シンチグラフィでも転移病変への集積を認めず、かつI-131内用療法の効果も得られなかったが、もう1例はI-131内用療法後シンチで転移病変への集積を認め、かつI-131内用療法の効果も得られた。rhTSH診断シンチグラフィによる治療効果予測と治療効果が一致した2例は転移病変のサイズが大きく、乖離を生じた1例は転移病変のサイズが小さかった。以上から、転移病変サイズが大きい分化型甲状腺癌患者においては、I-131内用療法前のrhTSH診断シンチグラフィによって、早期に治療効果予測が可能であることが示唆された。また、本研究で用いるrhTSHの利点として、甲状腺ホルモン休薬が不要であることが挙げられるため、I-131治療時の甲状腺ホルモン休薬によるeGFRの変化についても検討を加えた。38名の症例での検討では、I-131治療時の甲状腺ホルモン休薬によりeGFRは平均24%低下し、特に腎機能低下例においてはrhTSH利用の優位性が示された。 平成28-30年度にわたる本研究全体を通じて、I-131内用療法前のrhTSH診断シンチグラフィは、分子標的薬の導入を超早期に判断する材料の一助になり得る可能性が示唆された。
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