本研究は、光音響イメージング法を用いて生体内臓器描出、腫瘍内微小構造の描出、血管機能(バリアー機能ならびに成熟性)を評価することである。平成29年度は、平成28年度に引き続き研究計画書に基づて、生体レベルでの定常状態における主要臓器の光音響シグナルの評価をおこなった。具体的には、実験動物モデルとして、C57BL/6Jマウスを用い、既存の光音響イメージング装置として小動物超音波高解像度イメージングシステム(Vevo LAZR Imaging System)を使用し光音響イメージングの撮影、およびシグナル測定をおこなった。体表から観察可能なマウスの各臓器(肝臓、腎臓、皮膚、血管内、腫瘍)の光音響シグナルを光音響波を放出する薬剤であるインドシアニングリーンに絞って、様々な濃度を尾静脈より静脈注射し、マウスの各臓器における光音響シグナルの変化を経時的に観察した。これにより至適濃度をどの程度に設定するべきかの知見を得た。またインドシアニングリーン投与では濃度勾配に従ってシグナル増強が観察された。またインドシアニングリーンの組織分布を摘出標本の免疫染色と合わせて検討した。腫瘍モデルを用いた研究では血管新生阻害剤を用いた状態での、光音響イメージングを行い、腫瘍縮小効果との比較検討を行った。メチレンブルー、ゴールドナノロッドでの検討を昨年度に引き続き行ったが、現在使用している光音響イメージング機器においては、マウス各臓器におけるシグナル上昇ははっきり認められなかった。濃度不足なども考えられるが、これ以上の濃度では非生理的な濃度となってしまうため、現行の装置でのこれらの血管内投与によるイメージングは困難と考えられた。
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