欧米を中心に急速に普及しつつある新たなる画像診断機器として光音響画像がある。従来は被曝下の画像や造影剤の投与でしか評価不可能であった血流情報に起因する組織酸素化程度の画像化及び 定量化を可能とした。その性質上、腫瘍学への応用がなされ、腫瘍の低酸素状態と悪性度の関連の蓄積がなされている。その一方で、虚血状態での組織酸素化評価への応用もされつつああり、動物モデルを用いた心筋梗塞の評価も経皮的に行われている。本研究では、腎臓虚血再灌流時の組織酸素化程度の画像化と定量化を行い、その評価が最終的な腎機能予後を予測することを見出した。これにより、血流とは異なったパラメーターとして、組織酸素化程度の状態評価の有用性が明らかとなった。腎臓は酸素を消費する臓器であり、従って一定の障害が生じると酸素が消費されないため組織酸素飽和度は増加すると考えられている。本研究では、腎臓虚血再灌流モデル(一旦、臓器虚血状態を生じさせ、一定時間後に解除する)を作成し、その虚血程度の時間の長さにより軽度及び重症虚血状態を生じさせたが、軽度虚血の場合には再灌流後早期に酸素化程度が上昇し元に戻る一方で、重症ではその傾向が見られず遅れて酸素化上昇がみられた。特に、再灌流24時間後の腎酸素飽和度値は群間で特に強い統計学的な有意差が見られた。また、約1ヶ月後の腎サイズ、組織障害及び線維化程度、腎機能を評価すると、虚血程度により腎障害に差が見られた。従って最後に、再灌流後24時間後の腎酸素化程度の値と、約1ヶ月後の腎障害程度の関係を解析し良好な相関関係が見られたた。よって、腎臓組織酸素飽和度の画像化及び定量化は、腎臓虚血再灌流時の早期予後予測のバイオマーカーとして有用と考えられた。
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